第44帖 竹河 / 第20場面
男御子の誕生
あらすじ・人物・読み方
年を経て大君は男御子を産む。女一の宮をめぐる後宮の争いも絶えない。
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現代語で読む
何年かあって、また男御子〔皇子〕をお産みになった。大勢お仕えなさっている御方々に、このようなことがなくて長年になっていたのを、並々ではなかった〔大君の〕御宿世などに、世の人は驚く。帝〔冷泉院〕は、ましてこの上なく珍しいことと、この今宮〔新しい皇女〕をお思い申し上げていらした。「〔位に〕おられなくなった世でなかったら、どれほど張り合いがあっただろう。今は何事も栄えのない世を、たいそう残念だ」とお思いになっていた。
女一の宮を、この上ないものと思い申し上げていらしたのに、このように〔皇子皇女が〕それぞれ可愛らしくて、数が加わっていらっしゃるので、珍しい方面で、たいそう格別に〔院の〕御寵愛が深いのを、女御も、「あまりこうでは穏やかでないだろう」と、御心が動いた。
事に触れて、心穏やかでない意地の悪いことが起こったりして、自然と〔女御と御息所の〕御仲も隔たってゆくようである。世の習いとして、物の数でもない人々の間柄でも、もとから道理の分かっている方にこそ、関係のない他人も、心を寄せるものらしいので、院の内の上下の人々は、たいそう身分高くて、長く〔お仕えに〕なっていらっしゃる御方〔女御〕にばかり道理があるとして、些細なことでも、こちらの方〔御息所方〕をよくないように取りなしたりするのを、御兄の君たち〔玉鬘の息子たち〕も、「それ見なさい。〔母上は〕悪くおっしゃっておいたではありませんか」と、ますます〔玉鬘を〕お責め申し上げる。〔玉鬘は〕心安らかでなく、聞くのも苦しいままに、
「こんな苦労をせず、のどかに感じよく世を過ごす人も多いでしょうに。この上ない幸運に恵まれていなければ、宮仕えの道は、思い寄ってはならないことでした」と、大上〔玉鬘〕は嘆きなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。