ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第44帖 竹河 / 第21場面

昇進と絶えぬ思い

あらすじ・人物・読み方

蔵人少将は三位中将に進み、左大臣の娘を妻に得ても、中の君への思いは絶えない。薫も中納言に進む。

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現代語で読む

〔姫君たちに〕申し上げていた人々が、感じよく昇進しつつ、もし〔婿に〕なっていらしても、不釣り合いではない人が大勢いることよ。その中に、源侍従といって、たいそう若く、弱々しいと見えた〔薫〕は、宰相の中将になって、「匂宮か、薫か」と、聞き苦しいほど褒め騒がれているというが、本当に、たいそう人柄が重々しく奥ゆかしいのを、高貴な親王たちや大臣が、御娘を〔嫁がせたい〕と志しておっしゃるというようなことも、聞き入れないことなどがあるにつけて、「その頃は、若く頼りない様子だったけれど、感じよく立派に成長したようだ」などと、〔人々は〕言い合っていらっしゃる。

少将だった〔蔵人少将〕も、三位中将とか言って、評判がよい。「容貌までも、理想的でしたよ」などと、いくぶん意地の悪いお仕えの人々は、ひそひそと、「窮屈そうな御様子〔院での暮らし〕よりは〔臣下の方がよい〕」などと言う者もいて、〔蔵人少将が〕気の毒に見えた。

この中将〔三位中将〕は、なお思い初めた心が絶えず、憂くも辛くも思いながら、左大臣の御娘を妻に得たけれど、ほとんど心を留めず、「道の果てなる常陸帯の」と、手習いにも口癖にもするのは、どういう思いのあることなのだろうか。

御息所〔大君〕は、心安らかでない世間の煩わしさに、里〔実家〕に下がりがちにおなりになった。尚侍の君〔玉鬘〕は、思っていたようではない〔大君の〕御様子を、残念にお思いになる。内裏の君〔中の君〕は、かえって今風で心安らかそうに振る舞って、世にも由緒あり、奥ゆかしいという評判で、お仕えなさっている。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。