ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第44帖 竹河 / 第6場面

院の求め

あらすじ・人物・読み方

冷泉院からの大君参入の求めは日々に強まる。調度を整える一方、蔵人少将は中の君を失う嘆きを深める。

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現代語で読む

こうしているうちに、月日がはかなく過ぎてゆくにつけても、〔姫君たちの〕将来の気がかりなことを、尚侍の殿〔玉鬘〕は万事につけてお案じになる。〔冷泉〕院からは、御便りが日々にある。女御が、

「〔院を〕疎々しくお思いになって隔てなさっているのでしょうか。院は、こちらで〔尚侍が院を〕疎んじ申し上げているようだと、たいそう憎らしげにお思いになっておっしゃるので、冗談にも辛いのです。どうせなら、この頃のうちに〔大君を院へ参らせることを〕お決めになってください」

などと、〔女御は〕たいそう真剣に申し上げなさる。〔尚侍は〕「そうなるべき運命でいらっしゃるのでしょう。こんなに折悪くおっしゃるのも恐れ多いことだ」などとお思いになっていた。

御調度などは、もうたくさんお置かせになっているので、〔お供の〕人々の装束や、何やかやの細々したことをお急ぎになる。これを聞くと、蔵人少将は、死ぬほど思い詰めて、母北の方〔雲居雁〕を責め申し上げると、〔母は〕聞き兼ねていらして、

「たいそう傍ら痛いことにつけて、〔少将の思いを〕ほのめかし申し上げるのも、世にも頑なな闇の迷いというものです。〔尚侍に〕お察しいただける点もあれば、推し量って、やはり〔少将を〕お慰めください」などと、気の毒そうに申し上げなさるのを、〔尚侍は〕「苦しいことでもあるなあ」と、嘆いていらして、

「どういうことかと、思い定める手立てもないところへ、院から無理におっしゃるので、思い乱れております。〔少将の〕真剣な御心であるならば、この間は気持ちを静めて、〔私が〕お慰め申し上げる様子をもご覧になってこそ、世間の評判も穏やかになるでしょう」などとおっしゃるのも、この御参り〔大君の冷泉院参入〕が過ぎたら、中の君を〔少将に〕とお考えだからなのであろう。「〔二つのことを〕重ねては、困った得意顔になるだろう。まだ、位なども浅い身分なのに」などとお思いになると、男〔蔵人少将〕は、まったくそのように心を移そうはずもなく、〔中の君を〕ほのかに拝見して以来、面影が恋しく、どういう折に〔会えるだろう〕とばかり思われるのに、こうして当てが外れてしまったのを、思い嘆かれること限りがない。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。