ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第44帖 竹河 / 第9場面

玉鬘の返歌

あらすじ・人物・読み方

三条の宮の御前で少将の懸想が語られ、玉鬘は花に心を移したと歌で返す。

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現代語で読む

〔尚侍の〕御前で、あれこれの上臈めいた人々が、この懸想人〔蔵人少将〕の、さまざまに気の毒な様子を申し上げて知らせる中、中将の御許が、「『生き死にを』と言った様子は、言葉だけではなく、気の毒そうでした」などと申し上げると、尚侍の君も、気の毒だとお聞きになる。大臣・北の方のお考えによって、せめて人の恨みが深くならないようにと、〔相手を〕取り替えてお考えになるこの御参り〔大君の入内〕を、妨げるように思っているだろうことさえ、腹立たしいことこの上ないけれども、普通の人には、決してあってはならないものとして、故殿〔鬚黒〕がお決めになっていたものを、院へお参りになるだけでも、将来のはえばえしくなさを〔尚侍が〕お思いになっていた、ちょうどその折に、この御文〔少将の歌の文〕を取り入れてしみじみと感じ入る。〔尚侍の〕御返事は、

今日こそ分かりました。空を眺める様子で、花に心を移していたのだと。

「ああ、気の毒なこと。〔少将はこの返歌を〕冗談にばかり取りなすのでしょうね」などと言うけれど、〔尚侍は〕煩わしがって〔返歌を〕書き変えはしない。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。