ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第45帖 橋姫 / 第2場面

宮の行ひと姫君たちの成長

あらすじ・人物・読み方

姫君は静かで奥ゆかしい気立てで、弟宮である若君はおっとりとして愛らしい。家は次第に寂れ、仕える人々も散り散りになり、幼い若君の乳母までが去って、宮ご自身が二人を育てられる。荒れゆく邸で宮は仏の飾りだけを整えて日々を送り、世を離れる思いを深められる。人々は宮の出家同然の暮らしを非難するが、宮はお聞き入れにならない。念誦の合間には君たちに琴や碁を教え、その心ばえを御覧になる。

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現代語で読む

姫君は、気立てが静かで奥ゆかしい方で、見た目も振る舞いも、気高く奥ゆかしい様子でおられる。大切に思う高貴な血筋は優っているものの、どちらの君もさまざまにお世話申し上げになるが、思い通りにならないことが多く、年月につれて、宮の邸も寂しくなる一方である。

お仕えしていた人々も、生計の立たない心地がして、堪えきれず、次々に連れ立って退出し散っていき、若君のご乳母も、その騒ぎの中で、しっかりした人を選ぶこともできなかったので、身分相応の心の浅さで、幼い間を見捨て申し上げてしまったので、ただ宮だけがお育てになる。

さすがに広く趣のある宮の邸の、池や築山などの景色だけは昔と変わらないが、たいそうひどく荒れていくのを、所在なく眺めておられる。家司なども中心になる人がいないままに、草は青々と茂り、軒の忍草が、我が物顔に青々と広がっている。折々に花や紅葉の色も香も、同じ心で愛で合った頃にこそ、慰められることも多かったが、ますます寂しく、頼る方もないままに、持仏のお飾りだけを、わざわざ整えさせになって、明け暮れ勤行される。

このような絆に煩わされるだけでも、思いのほかに残念で、「自分の心ながらも思い通りにならなかった宿命だ」と感じられるのに、まして「どうして今さら世の人のように」などとばかり、年月につれて世の中をお離れになり、心ばかりは聖に徹しなさって、故君(北の方)がお亡くなりになって以来は、世の人の普通の心の持ちようなどは、冗談にもお思い出しになることがなかった。

「どうしてそれほどまでに。ご死別の悲しみは、また世に比べものがないように感じられるはずでしょうが、月日が経てば、それほどでもありますまい。やはり、世の人に倣うお心遣いをなさって、このように見苦しく生計の立たない宮の内も、自然と整えられる工夫もありましょうに」と、人々は非難申し上げ、あれこれと、もっともらしく意見申し上げることも、その種の話に触れて多かったけれど、宮はお聞き入れにならなかった。

ご念誦の合間合間には、この君たちを相手に遊び、次第におとなびてこられると、琴を習わせ、碁を打ち、偏つきなど、たわいないお遊び事につけても、そのご気性をご覧になると、姫君は、しっかりとして、深く重々しく見える。若君は、おっとりとして愛らしい様子で、恥ずかしがっている気配に、たいそう可憐に、あれこれとおられる。

春のうららかな日差しの中、池の水鳥たちが羽を交わしながら、それぞれにさえずる声などを、普段はたわいないこととご覧になっていたが、つがいが離れないのを羨ましく眺められて、君たちに御琴を教え申し上げになる。たいそう愛らしく、小さいお体で、それぞれに弾き鳴らされる楽器の音が、しみじみと趣深く聞こえるので、宮は涙を浮かべられて、

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第45冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。