ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第45帖 橋姫 / 第3場面

水鳥の歌

あらすじ・人物・読み方

亡き北の方を偲ぶ宮の歌に、姫君(大君)と若君(中の君)が手習のように歌を書きつける。姫君は巣立つ水鳥の契りを詠み、若君は巣守になる覚悟を詠んで、宮を慰める。君たちは琵琶と箏の琴を習い合わせ、その音色は幼いながらも趣深い。

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現代語で読む

連れ合いを置き去りにして去った水鳥のように、私も仮のこの世にひとり取り残されてしまったことだ。心の尽きる思いだ」と、目を押し拭われる。ご容貌がたいそう清らかでおられる宮である。長年のご勤行に痩せ細ってしまわれたが、それでも上品で優美であり、君たちを大切にされるお心ばえのほどに、直衣のよれよれになったのをお召しになって、くつろいだお姿は、たいそう見ていて気恥ずかしいほどである。

姫君が、御硯をそっと引き寄せて、手習のように書き混ぜされるのを、宮が「これにお書きなさい。硯には書きつけないものです」と言って、紙をお差し出しになると、姫君は恥ずかしがってお書きになる。どうしてこんなに早く巣立ってしまったのかと思うにつけても、憂き水鳥の契りの悲しさを知ることです。上手ではないが、その折は、たいそうしみじみとしたものだった。筆跡は将来が見込まれるが、まだよく続けては書けない程度である。

「若君もお書きなさい」と言われると、もう少し幼い様子で、長い時間をかけて書き出された。泣く泣く羽を着せてくださるあなたがおいででなかったら、私こそ巣守になり果ててしまったでしょう。お召し物などもよれよれになり、お側にほかに人もなく、たいそう寂しく所在なさそうなところに、さまざまにたいそう愛らしくしておられるのを、しみじみと心苦しく、宮はどうお思いにならないことがあろう。経を片手にお持ちになって、読みながら唱歌をされる。

姫君には琵琶、若君には箏の琴を、まだ幼いけれど、いつも合わせて習わせておられるので、聞き苦しくもなく、たいそう趣深く聞こえる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第45冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。