ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第45帖 橋姫 / 第4場面

薫の素性

あらすじ・人物・読み方

場面は転じて薫の君の紹介となる。父母に早く後れ、しっかりした後見もなく、音楽のほかには才能を伸ばす機会も乏しかったが、生まれつきおおらかで上品な人柄で、雅楽寮の楽人たちを召し寄せては楽の道に優れた腕前を身につけていった。

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父帝にも女御にも早くお後れ申し上げ、しっかりしたご後見で取り立ててくださる方もおいででなかったので、学問なども深くはお習いになれず、まして世の中に処していくお心構えは、どうしてお分かりになろう。高貴な方々と聞こえる中でも、驚くほど上品でおおらかな、女性のような方でおられるので、古い時代のご宝物や、祖父大臣のご処分品など、あれこれと尽きそうもなかったのに、行方もなく儚く失せ尽くして、ご調度品などだけが、わざわざ立派で多く残っていた。

お訪ね申し上げ、心を寄せ申し上げる人もいない。所在ないままに、雅楽寮の楽人たちなどといった類の、優れた者を召し寄せながら、たわいない遊びに心を入れてお育ちになったので、その方面は、たいそう見事に優れておられた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第45冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。