ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第47帖 総角 / 第14場面

中宮の諌め

あらすじ・人物・読み方

内裏では中宮が匂宮の里住みがちを諌める。その夜たまたま参った薫は、中宮の御方に泊まって宮中のありさまを眺める。

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現代語で読む

宮〔匂宮〕は、その夜、内裏に参上なさって、退出なさりそうにもないのを、人知れず御心も上の空でお嘆きになっていると、中宮が、

「やはり、このように独りでいらっしゃって、世間に、好色だとお噂の御名がだんだん聞こえてくるのは、やはり、とても悪いことです。何事も色めかしく、わざとらしい御心遣いはなさいますな。帝も気がかりに思い申し上げていらっしゃいます」

と、里住みがちでいらっしゃるのを諌め申し上げなさると、〔匂宮は〕とてもつらいとお思いになって、御宿直所にお出になって、御手紙を書いて差し上げなさった余韻も、ひどく眺めていらっしゃると、中納言の君〔薫〕が参上なさった。

〔匂宮は薫を〕そちらの味方だと思いなさるので、いつもよりうれしくて、

「どうしたらよいか。こんなに暗くなってしまったようで、心も乱れて〔困って〕いる」

と、嘆かわしそうにしていらっしゃった。〔薫は〕「よく御様子を拝見しよう」とお思いになって、

「数日を経て、このように参上なさったのに、今夜お仕えさせなさらず、急いで退出なさってしまっては、ますますよくないことと〔中の君が〕お思い申し上げなさるでしょう。台盤所のほうで承りましたところ、人知れず、面倒な宮仕えの甲斐として、つまらないお咎めを受けるのでしょうかと、顔色が変わっておりました」

と申し上げなさると、

「とても聞きづらくおっしゃることだ。大抵は人が取りなすことだろう。世間で咎められるほどの心は、何に使おうか。身の置き所の狭い身分こそ、かえって厄介なことだ」

と言って、本当に嫌らしくまでお思いになっていた。

〔薫は〕お気の毒に拝見なさって、

「同じお騒ぎでいらっしゃるようです。今夜の罪には代わり申し上げて、身をも無駄にしてしまいましょう。木幡の山に馬がどうして〔行け〕ましょうか。ますます世間の噂に差し障りがなくはないでしょう」

と申し上げなさると、すっかり暮れて更けてしまった夜なので、〔匂宮は〕思い悩んで、御馬でお出かけになった。

「御供には、かえってお仕え申し上げますまい。お世話を〔よろしく〕」

と言って、この君〔薫〕は内裏にお仕えなさる。

中宮の御方に参上なさると、

「宮はお出かけになったそうだ。あきれるほどお気の毒な御様子だこと。人がどう拝見するだろう。帝がお聞きになっては、諌め申し上げないのが言っても甲斐がない、とお思い申し上げなさるのが無理もないことだ」

とおっしゃる。多くの宮たちが、このように大人びて整いなさっても、大宮〔中宮〕は、ますます若く美しい様子が勝りなさっていた。

「女一の宮も、このようでいらっしゃるに違いない。いつの機会に、これほどでも近くで、御声だけでも聞き申し上げられるだろう」と、しみじみ思われる。「好色な人が、似つかわしくない心を使うのも、このような御関係の、さすがに遠慮なく立ち入って、心にかなわない折のことなのだろう。私の心のように、ひねくれた心の類が、また世にあるだろうか。それに、やはり心動き始めた相手〔大君〕のことは、思い絶えることができない」

など思い続けていらっしゃる。お仕えする限りの女房の容貌や心の様子は、どれも悪くはなく、見苦しくなくそれぞれ趣がある中に、上品に優れて目にとまる人もいるが、〔薫は〕決して心乱し始めまいという心で、とても淡白に振る舞いなさった。わざとらしく見せて白々しくする人もいる。

大抵は恥ずかしそうに、落ち着いて振る舞いなさるあたりなので、表面こそ心だけは落ち着かせているが、人それぞれの心がある世の中なので、色めかしく進み出た本心が漏れて見える人もあるのを、「さまざまに趣深くも、心打たれることもあるな」と、立っても座っても、ただ無常な様子を思い続けていらっしゃる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第47冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。