第47帖 総角 / 第19場面
内裏に籠もる匂宮
あらすじ・人物・読み方
匂宮の忍び通いが帝や中宮の耳に入り、匂宮は内裏に籠もる。左大臣の六の君との婚儀が進められる。
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現代語で読む
宮〔匂宮〕は、戻られて、いつものように忍んで〔宇治へ〕とお出かけになろうとしたのを、内裏で、
「このようなお忍び通いのために、山里へのお出かけも、不意にお思い立ちになるのだそうです。軽々しいご様子だと、世間の人も陰で非難し申し上げているそうです」
と、衛門督が漏らし申し上げなさったので、中宮もお聞きになって嘆き、主上〔帝〕もますますお許しにならないご様子で、
「全般に心のままにお振る舞いになる、その里住まいが悪いのだ」
と、厳しいお言葉がいろいろ出て、〔匂宮を〕内裏にしっかりお仕えさせ申し上げなさる。左大臣殿の六の君を、〔匂宮は〕承知せずお思いになっていたことだが、強いて〔匂宮に〕差し上げなさるよう、皆で決められる。
中納言殿〔薫〕はお聞きになって、やる方なく物思いして歩きなさる。
「私があまりにも風変わりなのだろうか。そうなるべき因縁があったのだろうか。親王〔八の宮〕が気がかりだとお思いになっていた様子も、しみじみ忘れがたく、この姫君たちのご様子や気配も、格別のこともなく世の中で衰えなさってしまうことが、惜しく思われるあまりに、一人前に扱って差し上げたいと、不思議なほど世話を焼かれるうちに、宮〔匂宮〕もあいにくと取り持って責めなさったので、私の思う方〔大君〕は違うのに、〔中の君を〕譲られる有様もやる方なくて、このように扱ってしまったのだ。
思えば、後悔されることでもあったのだなあ。どちらも自分のものとして拝見したならば、咎める人もいなかっただろうに」
と、取り返せるものではないけれど、おかしなことに、心の中で思い乱れなさる。
宮〔匂宮〕は、まして、御心にかからない時とてなく、〔中の君が〕恋しく気がかりだとお思いになる。
「御心にかけてお思いになる人がいるなら、ここに参らせて、普通の様子で穏やかにお扱いなさい。特別にお思い申し上げなさっているのに、軽々しいように人が噂しそうなのも、とても残念なことです」
と、大宮は明け暮れ〔匂宮に〕申し上げなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第47冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。