第47帖 総角 / 第2場面
薫の訴えと大君の応答
あらすじ・人物・読み方
薫は大君に思いの深さをまめやかに訴えるが、大君は亡き宮の遺志を盾に、世の常の縁にはなびこうとしない。
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現代語で読む
〔大君は〕ご自身のことは、このように何とはなくはぐらかして恥ずかしそうにされるので、〔薫は〕すらすらとは言い寄ることもできず、宮〔匂宮〕のご用件をまじめに申し上げなさる。
「それほどお心に入るはずもないことを、このような方面に少し進んでおられるご性分からして、〔匂宮が〕お話し始めになった負けじ魂からでしょうかと、あれこれと、たいそうよくご様子を拝見しております。本当にご心配には及ばないはずなのに、なぜこのように強いて、遠ざかっておられるのでしょうか。
世間の有様などを、ご理解なさるはずがないとは拝見しておりませんのに、ああ、よそよそしくばかりお振る舞いになるので、これほど心からお頼り申し上げる気持ちに背いて、恨めしく存じます。なんとかお考えのほどを、はっきりとお聞きしたいものです」
と、たいそう真剣に申し上げると、
「〔父宮のご遺志を〕違えまいという心あってこそ、ここまで世にも珍しい世間の先例のような有様で、隔てなくお仕え申し上げております。それをお分かりいただけなかったことこそ、浅い思いも混ざった気がいたします。実際、このような住まいなどに、心ある人は思い残すことはないはずですが、何事にも遅れをとり始めた中でも、今おっしゃる件については、昔も父は決して口にかけて、こうなればああなればなどと、将来の見通しに交えておっしゃり置くこともありませんでしたので、やはり、このような有様で、世間的な方面は思い絶つべきだと〔父が〕お考え置きになったのだと考え合わせますと、どうにも申し上げるすべがなくて。それにしても、少し世に籠もった境遇で、深山隠れには気の毒に見える人〔妹・中の君〕の身の上を、これほど朽木のようにし果ててしまいたくないものだと、人知れず心配に思っておりますが、どうなる世の中なのでしょうか」
と、嘆いて物思いに乱れておられた時の様子は、たいそう痛ましげである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第47冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。