ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第48帖 早蕨 / 第9場面

弁の尼と中の君の別れ

あらすじ・人物・読み方

弁は宇治に留まる決意を中の君に語る。海人の歌の贈答ののち、中の君は姉の調度を弁に残し、別れを惜しむ。

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お悲しみになっておっしゃっていたご様子を話して、弁は、ますます慰めがたく悲しみに暮れていた。女房たちは満足そうな様子で、衣類を縫い用意しながら、年老いた容貌も気にせず、身づくろいにうろうろしている中で、ますます質素にして、人は皆、出立の支度に忙しくしている袖の浦に、一人藻塩を垂らして涙に暮れる海人ですよ、私は。とお訴え申し上げると、

藻塩を垂らす海人の衣とどう違いましょう。浮いた波に濡れる私の袖も同じことです。結婚生活に入ることも、とてもできそうにないことと思われるので、事情によっては、ここを荒れ果てさせまいと思うが、そうすればお会いすることもありましょうが、暫くの間も、心細くお残りになるのを見送ると、ますます気が進みません。このような尼姿の人も、必ずしも引き籠もってばかりはいないもののようですから、やはり世間一般のように考えて、時々お会いください」

などと、とてもやさしくお話しになる。亡き姉君がお使いになったしかるべき御調度類などは、みなこの人にお残しになって、「このように、誰よりも深く思い沈んでいらっしゃるのを見ると、前世からも、特別の約束がおありだったのだろうかと思うことまでが、慕わしくしみじみと感じられます」とおっしゃると、ますます子供が慕って泣くように、気持ちを鎮めることができず涙に沈んでいた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第48冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。