第49帖 宿木 / 第14場面
按察使の君の局
あらすじ・人物・読み方
薫は宮中の按察使の君の局に泊まり、関川に寄せた歌を交わして夜を明かす。
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現代語で読む
いつもの、寝覚めがちな所在ない頃なので、按察使の君といって、他の人より少し目をかけていらっしゃる者の局にいらして、その夜は明かしなさった。夜が明け過ぎても、人が咎めるはずもないのに、つらそうに急いでお起きになるのを、〔その君は〕ただ事でなく思うようである。
世間に許されない仲で通い始めた関川を、見慣れ始めたという評判が立つのが惜しいことです。
〔その君が〕気の毒なので、
深くないように表面は見えますが、関川の下の通いは絶えるものでしょうか。〔心の底の愛情は絶えません〕
深いとおっしゃるだけでも頼りないのに、この表面の浅さは、ますます〔その君には〕つらく思われるだろう。妻戸を押し開けて、
「本当は、この空をご覧なさい。どうしてこれを知らない顔で夜を明かそうか。風流人の真似ではなく、ますます明かしがたくなる夜ごとの寝覚めには、この世やあの世まで思いやられて、しみじみする」
などと言い紛らわして〔薫は〕お出になる。特に趣のある言葉の数々を尽くさないが、様子の優美な見かけのせいだろうか、情けがないなどとは誰にも思われなさらない。ちょっとした戯れ言を言いかけなさった人が、身近に拝見したいとばかり思い申し上げるのか、無理に、世を背きなさった宮の御方〔女三の宮〕のもとに、縁を尋ねて参り集まって伺候するのも、気の毒なことが、身分ごとに多くあるだろう。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。