ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第49帖 宿木 / 第17場面

中の君のもとでの朝

あらすじ・人物・読み方

匂宮は中の君のもとで朝を迎え、二人の仲は深まる。

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現代語で読む

翌日も、心穏やかに〔宮は〕お休みになって起きて、お手水、お粥などもこちら〔中の君のもと〕で召し上がる。お部屋のしつらえなども、あれほど輝くばかりの、高麗や唐土の錦や綾を裁ち重ねた目移しする〔六の君の邸の〕様子には、世の常にすっかり慣れた気持ちがして、人々の姿も、しおれて黄ばんだものが混じったりなどして、とても静かに見回される。

君〔中の君〕は、柔らかな薄色の着物に、撫子襲の細長を重ねて、少し乱れていらっしゃるお姿が、何事もとても美しく、大げさなほど盛んな人〔六の君〕のお匂いと、あれこれ思い比べても、劣っているとも思えず、親しく趣があるのも、〔宮の〕お心ざしが並々でないのに恥じないようであるよ。丸く美しくふっくらしていた人が、少し細くなったのに、色はますます白くなって、上品で趣がある。

このような御移り香などが目立たない時でさえ、愛嬌があって可愛らしいところなどが、やはり人より多く勝って思われるままには、

「姉妹などではない人が、親しく文をやり取りして、何かにつけて、自然と声や気配までも聞き見慣れるようになれば、どうして〔その人を〕ただの人とは思えようか。〔宮は〕必ずそのようにお思いになるに違いないことなのに」

と、ご自分の隈なく見通すご性分から自然とお分かりになるので、常々気にかけ、「はっきり分かるような文などがあるか」と、近くの御厨子や小唐櫃のようなものまで、何気なくお探しになるが、そのようなものはない。ただ、たいそうまっすぐで言葉少なで、素朴な〔文〕などが、わざわざしたものではないけれど、品々に取り混ぜてあったりするので、「おかしい。やはり、これだけのはずはない」と疑われるので、今日はいっそう気が休まらないのも、もっともなことである。

「あの人〔匂宮〕の様子も、心ある女なら、愛しいと思うに違いないものを、どうして〔中の君が〕よそ事のように放っておけようか。たいそうよい仲なのだから、互いに思いを交わし合っているのだろう」

と思いやるのが、〔薫には〕つらく腹立たしく、ねたましかった。やはり、たいそう気が休まらなかったので、〔匂宮は〕その日もお出かけになれなかった。六条院〔の六の君〕へは、お文を二度三度お送り申し上げなさるのを、

「いつ頃から積もり積もったお言葉なのでしょう」

とつぶやく老女たちがいる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。