ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第49帖 宿木 / 第18場面

薫の戒めと母宮

あらすじ・人物・読み方

匂宮の籠居を聞いた薫は自らを戒め、母の女三の宮のもとを訪れて装束の支度を進める。

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現代語で読む

中納言の君〔薫〕は、このように宮〔匂宮〕が籠もっておられるのを聞くと、気がとがめるように思われるけれど、

「情けないことだ。これは自分の心が思い上がって悪いためだ。安心できると思うようになったあたり〔中の君〕のことを、このように思ってよいものか」

と、無理に思い返して、「そうは言うものの、〔宮は中の君を〕お捨てにはなれないらしい」と、うれしくもあり、「〔宇治の〕人々の様子などが、痛ましいほどにしおれて見えたのを」と思いやりなさって、母宮の御方に参上なさって、

「適当な用意の品々はございますか。使いたいことがあって」

などと申し上げなさると、

「いつもの、来月の法事の料として、白い品々はあるでしょう。染めたものなどは、今はわざわざ用意して置かないので、急いで作らせることでしょう」

とおっしゃると、

「いえ。大げさな用ではありません。あるものに応じて〔いただければ〕」

と言って、御匣殿などにお尋ねさせになって、女の装束を何領も、細長なども、ただあるものに応じて、普通の絹や綾などを取り添えなさる。ご自身の御料と思われるものには、ご自分の御料にあった紅の擣目で並々でないものに、白い綾などを何枚も重ねておられたが、袴の具がなかったので、どうしたものか、腰紐が一つあるのを、引き結んで加えて、

結んだ契りが格別な下紐を、ただ一筋だけ〔添えたこと〕を、恨みに思われましょうか。

大輔の君という、落ち着いた人で、親しみやすそうな人を使いとしてお遣わしになる。

「間に合わせの様子の見苦しいのを、うまく包み隠して〔届けてください〕」

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。