第49帖 宿木 / 第24場面
薫の昇進
あらすじ・人物・読み方
如月、薫は権大納言に任じられ、右大将を兼ねる。世の栄華は頂点に達する。
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現代語で読む
如月の朔日頃に、直物とかいうことで、〔薫は〕権大納言におなりになって、右大将を兼ねられた。〔それは〕右の大殿が左大臣でおいでになって、〔以前〕お辞しになった職であったのだ。
〔薫は〕お祝いにあちこちを回られて、この宮〔中の君の邸〕にも参られた。〔中の君が〕たいそう苦しそうにしておられるので、〔匂宮が〕こちらにおいでになる時であったから、そのまま〔お見舞いに〕参られた。僧などが控えていて不都合な方へ〔薫が来られた〕と驚かれて、鮮やかな御直衣や御下襲などを〔匂宮に〕差し上げ、お召し物を整えになって、〔階下に〕下りて答の拝をなさるお姿がそれぞれたいそう立派で、
「そのまま、官の禄を賜る饗宴の席へ〔ご一緒しましょう〕」と、
お誘い申し上げなさるのを、病んでおられる人〔中の君〕のことがあって、〔匂宮は〕ためらっておられるようである。右大臣殿がなさった通りにということで、六条の院で〔その饗宴は〕行われるのであった。
垣下の親王たちや上達部が、大饗にも劣らず、たいそう騒がしいほどに集まっていらっしゃった。この宮〔匂宮〕もお渡りになって、落ち着く心もなく、まだ事が終わらないうちに急いでお帰りになったのを、大殿の御方〔六の君〕は、
「たいそう物足りなく、興醒めです」
とおっしゃる。〔六の君は〕劣るはずもないご身分であるのに、ただ今の〔匂宮の〕ご寵愛の華やかさに思い上がって、押しのけて振る舞っていらっしゃるようである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。