ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第49帖 宿木 / 第25場面

中の君、男子を出産

あらすじ・人物・読み方

中の君は男子を出産する。帝もこれを聞いて喜び、佩刀を贈る。

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現代語で読む

やっとのことで、その明け方、男の子としてお生まれになったのを、宮〔匂宮〕もたいそう甲斐あって嬉しくお思いになっていた。大将殿〔薫〕も、〔ご自身の昇進の〕喜びに加えて、嬉しくお思いになる。昨夜お越しになっていたお祝いの場に、そのまま、このお喜びも加えて、立ったまま〔略式で〕お見舞いにいらっしゃった。このように〔中の君が〕籠もっていらっしゃるので、参上しない人はいない。

お産養いは、三日目は例によってただ宮の私事として、五日目の夜は大将殿〔薫〕から屯食五十具、碁手の銭、椀飯などは世間並みに〔贈られ〕、子持ち〔母親〕の御前に衝重三十、稚児のお召し物は五重襲で、お襁褓などは、仰々しくなく、ひっそりとお整えになったけれど、細かく見れば、わざわざ目新しく心のこもった趣向などが見えた。

宮〔匂宮〕の御前にも浅香の折敷や高坏で、粉熟をお差し上げになった。女房の御前には、衝重は当然として、桧破籠三十、いろいろと趣向を尽くしたことがある。人目に仰々しくなるようなことは、わざわざなさらない。

七日目の夜は、后の宮〔明石の中宮〕のお産養いなので、参上する人々がたいそう多かった。宮の大夫をはじめ、殿上人、上達部が数知らず参上した。内裏でもお聞きになって、

「宮が初めて大人らしくなられたというのに、どうして〔何もしないでいられようか〕」

と仰せになって、御佩刀をお贈りになった。

九日目も、大殿〔夕霧〕からお仕え申し上げた。〔夕霧が〕快く思わない間柄ではあるが、宮〔匂宮〕のお気持ちがあるので、ご子息の公達などが参上して、すべてたいそう申し分なく立派なので、〔中の君〕ご自身も、ここ数か月、物思いがちで体調もすぐれない上に、心細く思っていらっしゃったのに、このように重々しく華やかなことが多いので、少しは慰めにもなっていらっしゃるだろう。

大将殿〔薫〕は、「これほどまで〔匂宮が〕すっかり大人になってしまわれたようでは、ますます私の方は縁遠くなるだろうか。また、宮の〔中の君への〕お気持ちも決して疎かではないだろう」と思うのは残念だけれど、また、初めからの心遣いを思うと、たいそう嬉しくもある。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。