第49帖 宿木 / 第29場面
女二の宮、三条の宮へ移る
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現代語で読む
その夜にちょうど、宮〔女二の宮〕をお出し申し上げなさった。儀式はたいそう格別である。主上の女房がそのままお送りをお仕え申し上げた。庇の御車で、庇のない糸毛が三つ、黄金作りが六つ、ただの檳榔毛が二十、網代が二つ、童、下仕えが八人ずつお控えし、またお迎えの出車どもに、本所の人々を乗せてあった。お送りの上達部、殿上人、六位などは、言う限りない美しさを尽くさせていらっしゃった。
こうして、安心して打ち解けて見申し上げると、たいそう愛らしくいらっしゃる。小柄で静かで、ここがと見える欠点もなくいらっしゃるので、「宿世のほどは残念ではなかった」と、得意にならずにはいられないものの、過ぎ去った方〔大君〕が忘れられるはずもなく、なお紛れる時もなく、ただ恋しく思われるので、
「この世では慰めかねることに違いない。仏になってこそ、不思議なほど辛かった契りのほどを、何の報いかと諦めて思い離れることができるだろう」
〔薫は〕そう思いながら、寺〔造営〕の急ぎのことにだけ心を注いでおられた。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。