第51帖 浮舟 / 第15場面
薫の告白と匂宮の先手
あらすじ・人物・読み方
薫は女二の宮に宇治の姫への思いを打ち明けるが、その移転の計画が匂宮に漏れ、匂宮は月末に浮舟を乳母の家へ迎える先手を打つ。
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女宮に物語などを申し上げなさる機会に、「失礼だとお思いになるかと、はばかられますが、さすがに年を経た人がいるのを、不思議な所に捨て置いて、大変に物思っているのが心苦しいので、近く呼び寄せて、と思っております。
昔から変わった心構えのあった身で、世の中を、すべて普通の人でなく過ごそうと思っておりましたが、こうして拝見するにつけて、ひたすらにも捨てがたいので、
いることも人に知らせなかった人の上まで、心苦しく、罪を得そうな心地がして」と、申し上げなさると、「どんなことに心を置くものとも知らないのを」
と、ご返事なさる。「内裏などに、悪い様子にお聞きになる人がいるでしょうか。世の人の物言いは、たいそう面白くなく怪しからずございます。
けれども、それは、それほどの数にさえございませんでしょう」などと申し上げなさる。「造った所にお渡ししよう」とお思い立つと、「このためのものだった」と、華やかに言いなす人がいるかなど、苦しいので、たいそう忍んで、障子を張るべきことなど、人は何とでも言いそうなところ、
この内記が知る人の親、大蔵大輔という者に、親しく心安いままに、おっしゃり付けていたので、聞き継いで、宮には隠れなく申し上げた。
「絵師どもなども、お随身どもの中にいる、親しい殿人などを選んで、さすがにわざわざさせなさっています」と申すのに、ますますお思い騒ぎになって、ご自分の乳母の、遠い受領の妻として下る家が、下の方にあるのを、
「たいそう忍んだ人、しばらく隠しておいたら」と、語らいなさったところ、「どんな人だろうか」と思うけれど、大事とお思いになったのに、畏れ多いので、「それでは」と申し上げた。
これをお設けになって、少しお心を留めなさる。この月の晦日の方に、下るはずなので、「そのままその日にお渡ししよう」とお思い構える。「こう思う。決して決して」
と言い遣わしなさりながら、おいでになることは、たいそう無体であるうちにも、ここにも、乳母がたいそう賢いので、難しいだろうという旨を申し上げる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第51冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。