ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第51帖 浮舟 / 第18場面

薫の察知

あらすじ・人物・読み方

薫は随身の報告と、宮の御前で見た内記の文の様子から、匂宮が浮舟に通っていることを察し、道すがら深く思い悩む。

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浮舟・第18場面0 / 42
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雨の降った日、来合わせていたお使いどもが、今日も来ていた。殿のお随身は、あの少輔の家で時々見る男なので、「真人は、何しに、ここにはたびたび参るのか」

と問う。「私用で訪ねるべき人のもとに参って来るのです」と言う。「私用の人に、艶な文を差し取らせる、様子のある真人だな。物隠しは何だ」

と言う。「実は、この守の君の、お文を、女房に差し上げなさるのです」と言うと、言い違えながら不思議に思うけれど、ここで定めて言うのも変わった様子なので、それぞれ参った。

利口な者で、供にいる童を、「この男に、さりげなく目を付けよ。左衛門大夫の家に入るのか」と見せたところ、「宮に参って、式部少輔道定朝臣に、お文は取らせました」

と言う。それほど尋ねる者とも、劣った下衆は思わず、ことの心を深く知らなかったので、舎人の人に見現されてしまったのが、残念だなあ。殿に参って、今お出になろうとする頃に、お文を差し上げる。

直衣で、六条の院に、后の宮のお出ましになる頃なので、参りなさるのだったので、仰々しく、御前など大勢もいない。お文を差し上げる人に、

「不思議なことがございました。ご覧になってお定めになろうと、今まで控えておりました」と言うのを、かすかにお聞きになって、歩み出なさるままに、「何事か」

とお聞きになる。この人の聞くのもはばかられると思って、畏まって控えている。殿もそのように見知りなさって、お出になった。宮が、例になく悩ましそうでいらっしゃると言って、宮たちも皆参りなさった。上達部など多く参り集まって、騒がしいけれど、格別なこともおいでにならない。

あの内記は、政官なので、遅れて参った。このお文も差し上げるのを、宮が、台盤所においでになって、戸口に召し寄せてお取りになるのを、大将が、御前の方から立ち出なさる、横目に見通しなさって、

「切にもお思いになるはずのお文の様子だな」と、面白さに立ち止まりなさった。「引き開けてご覧になる、紅の薄様に、細やかにお書きになるだろう」と見える。

文に心を入れて、すぐにもお向きにならないところに、大臣も立って外の方においでになるので、この君は、障子からお出になると言って、「大臣がお出になる」と、咳払いして、驚かし申し上げなさる。

引き隠しなさったところを、大臣が差し覗きなさった。驚いてお紐をお締めになる。殿がつい座りなさって、「退出するでしょう。お邪気が久しく起こさせなさらなかったのを、恐ろしい業だな。山の座主を、ただ今お請じに遣わそう」

と、急がしそうにしてお立ちになった。夜更けて、皆お出になった。大臣は、宮を先に立て申し上げなさって、多くの御子どもの上達部、君たちを引き続けて、あちらにお渡りになった。

この殿は遅れてお出になる。随身が様子ばんでいたのを、不思議とお思いになったので、御前などを下りて火を灯す頃に、随身を召し寄せる。「申したのは、何事か」

とお聞きになる。「今朝、あの宇治に、出雲権守時方朝臣のもとにいる男が、紫の薄様で、桜に付けた文を、西の妻戸に寄って、女房に取らせました。

見届けて、あれこれと問いしましたところ、言い違えながら、虚言のように申しておりましたのを、どう申すのか、と言って、童をさせて見せましたところ、兵部卿宮に参りまして、

式部少輔道定朝臣に、その返事は取らせました」と申す。君は、不思議とお思いになって、「その返事は、どのようにして、出したのか」

「それは見届けませんでした。別の方から出しました。下人の申しておりましたのは、赤い色紙の、たいそう清らかな、と申しておりました」と申し上げる。お思い合わせると、違うことはない。それほど見せたろうのを、利口だとお思いになるが、人々が近いので、詳しくおっしゃらない。

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底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第51冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。