ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第51帖 浮舟 / 第22場面

迎えの約束

あらすじ・人物・読み方

匂宮は二十八日に迎えに来ると文を送るが、浮舟は返事もせず、迎えの夜を拒む気持ちを固める。

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浮舟・第22場面0 / 36
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二十日あまりにもなった。あの家主が、二十八日に下るはずだ。宮は、「その夜は必ず迎えよう。下人などに、よく様子が見えない心遣いをしなさい。こちらからは、夢にも聞こえがあるはずがない。疑いなさいますな」

などとおっしゃる。「さて、あるまじき様子でおいでになったら、今一度物をも申し上げられず、気がかりでお返し申し上げることよ。また、時の間でも、どうしてここにお寄せ申し上げようとするのか。

甲斐なく恨んでお帰りになるだろう」様子などをお思いやると、いつものように、面影が離れず、堪えず悲しくて、このお文を顔に押し当てて、しばらくは包んでも、たいそう大変にお泣きになる。

右近が、「私の君、このようなお様子は、ついに人が拝見してしまうでしょう。次第に、不思議などと思う人がいるようです。こんなに拘わりお思いにならずに、そうあるべき様子に申し上げさせなさってよ。

右近がおりましたら、大げさなことも図り出しましたら、これほど小さなお身一つは、空から連れて申し上げさせなさるでしょう」と言う。しばらく躊躇して、

「こんなにばかり言うのが、たいそう心苦しい。そうもあるはずのこと、と思いかけばこそあろうが、あるまじきこと、と皆思い取るのに、無体に、こんなにばかり頼んだようにおっしゃるので、どんなことをし出そうとするのかなど、

思うにつけて、身がたいそう心苦しい」と言って、お返事も申し上げなさらなくなった。宮は、「こんなにばかり、やはり受け引く様子もなくて、お返事さえ絶え絶えになるのは、あの人の、あるべき様子に言い収めて、少し心安い方にお思い定まったようだ。

もっともだ」とお思いながらも、たいそう残念でねたましく、「そうはいっても、私をあわれと思っていたものを。会い見ない途絶えに、人々の言い知らせる方に寄るのだろうな」

などと眺めなさると、行く方も知らず、虚しい空に満ちた心地がなさるので、いつものように、大変にお思い立っておいでになった。葦垣の方を見ると、例になく、

「あれは、誰か」と言う声々が、騒がしい。立ち退いて、心知りの男を入れたが、それをさえ問う。前々の気配にも似ない。煩わしくて、

「京から急なお文があるのです」と言う。右近は徒歩の者の名を呼んで会った。たいそう煩わしく、ますます覚える。「まったく、今宵は不要です。大変に畏れ多いこと」

と言わせた。宮は、「どうして、こんなに持て離れるのだろう」とお思いになると、無体で、「まず、時方が入って、侍従に会って、そうあるべき様子に図れ」

と言って遣わす。利口な人で、あれこれ言い構えて、訪ねて会った。「どんなことでしょうか。あの殿のおっしゃることがあると言って、宿直にいる者どもが、賢しがり立っている頃で、たいそう無体なことです。

御前には、物をばかり大変にお思い詰めるのは、このようなことの畏れ多いのを、思い乱れるからこそ、と心苦しく拝見します。まったく、今宵は。人の様子が見えましたら、かえってたいそう悪いでしょう。

そのまま、そうお心遣いさせなさるはずの夜、ここにも人知れず思い構えて、申し上げさせるはずです」乳母の急ぎのことなども語る。大夫が、

「おいでになる道のおぼろけならず、強引なお様子に、あっけなく申し上げさせるのは、大変なことです。それでは、さあ、ください。一緒に詳しく申し上げなさい」と誘う。

「たいそう無体でしょう」と言い争うほどに、夜もひどく更けてゆく。

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底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第51冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。