第51帖 浮舟 / 第8場面
暁の別れ
あらすじ・人物・読み方
京から急の使いが来て、匂宮は暁に浮舟と別れの歌を交わし、涙ながらに二条院へ帰る。
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夜になって、京へ遣わした大夫が参って、右近に会った。「后の宮からもお使いが参って、右の大殿もご不満申し上げなさって、『人に知られさせなさらないお歩きは、たいそう軽々しく、失礼なこともあるのを、すべて、
内裏などにお聞きになることも、身のためにはたいそう辛い』と大変におっしゃっていた。東山に聖をご覧になるためにと、人には申しておりました」
などと語って、「女こそ罪深くおいでのものではある。とりとめない眷属の人をまで惑わせなさって、虚言までさせなさるよ」と言うと、「聖の名までお付け申し上げなさったので、たいそうよろしい。私の罪も、それで滅ぼしなさるでしょう。
本当に、たいそう不思議なお心で、本当に、どうしてお慣れになったのでしょう。かねてこうおいでになるだろうと承っておれば、たいそう畏れ多いので、図り申し上げもしたでしょうに。奥深くないお歩きですこと」
と、扱い申し上げる。参って、「そのようです」と真似て申し上げると、「なるほど、どうなることか」と、お思いやると、「窮屈な身こそわびしい。軽い身分の殿上人などになって、しばらくいたいものだ。どうすべきか。こう包むべき人目も、憚り合えないだろう。
大将もどう思うだろうか。そうあるべき身分とは言いながら、不思議なまでに、昔から親しい仲に、こんな心の隔ての知られた時は、恥ずかしく、またどうだろうか。
世の例えに言うこともあるので、待ち遠しい私の怠りも知らず、恨まれなさるのまでも思う。夢にも人に知られなさるはずのない様子にして、ここでない所に連れて離れ申し上げよう」
とおっしゃる。今日さえこうして籠もっていらっしゃるべきではないので、お出になろうとするのにも、袖の中に留めなさったのだったろう。明け果てない前にと、人々が咳払いして驚かし申し上げる。妻戸に一緒に連れておいでになって、お出しになることができない。
世にも知らないほど戸惑うことでしょう。先立つ涙が道をかき曇らせて。女も、限りなくあわれと思った。
涙をささやかな袖にせき止めきれず、どうやってお別れを引き止められましょうか。風の音もたいそう荒々しく、霜の深い暁に、自分の衣々も冷たく感じられて、お馬にお乗りになる頃、引き返すように驚くけれど、お供の人々は、「たいそう戯れにくい」と思って、
ただ急がせて急がせて出すので、自分でもなくお出になった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第51冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。