ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第52帖 蜻蛉 / 第5場面

偽りの葬送

あらすじ・人物・読み方

その夜、浮舟の衣や調度を車に載せて向かいの山の原で焼き、死を装う。人々は口を固く閉ざす。

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蜻蛉・第5場面0 / 16
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大夫、内舎人など、脅し申し上げた者どもも参って、

「御葬送の事は、殿に事の旨も申させなさって、日を定められ、厳しくこそし申し上げましょう」

など言ったけれど、

「わざわざ、今宵を過ごすまい。ひどく忍んでと思う様があるので」

といって、この車を、向かいの山の前である原にやって、人も近くも寄せず、この案内を知っている法師の限りして焼かす。ひどく儚くて、煙は果てない。田舎人どもは、なかなか、このようなことを仰々しくしなし、言忌みなど深くするものであるので、

「ひどく不思議に。例の作法など、ある事どもを知らず、下臈下臈しく、あえなくてさせられたことだな」

と誹ったので、

「片方いらっしゃる人は、特にこのように、京の人はしなさる」

などぞ、さまざまに安からず言っていた。

「このような人々の言い思うことさえ慎ましいのを、まして、物の聞こえ隠れない世の中に、大将殿あたりに、骸もなくお亡くなりになった、と聞かせなさると、必ず思い疑いなさることもあるだろうのを、宮もまた、同じ御仲らいなので、その人のいらっしゃるいらっしゃらない、しばしこそ忍んでもお思いでしょうが、ついには隠れはない。

また、定めて宮をこそ疑い申し上げなさらないだろう。どのような人が率いて隠したかなどぞ、思い寄せなさるだろう。生きていらっしゃった御宿世は、ひどく気高くいらっしゃった人の、げに亡き影に、悲しいことをか疑われなさるだろう」

と思うと、ここの内である下人どもにも、今朝のあわただしかった惑いに、「様子も見聞きしたのには口固め、案内知らないのには聞かせるな」などぞ謀っていた。

「長らえては、誰にも、静やかに、あった様子をも申し上げよう。ただ今は、悲しさが覚めそうなことを、ふと人伝てにお聞きになるのは、なおひどく痛々しいことだろう」

と、この人二人ぞ、深く心の鬼が添っているので、持て隠していた。

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底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第52冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。