第53帖 手習 / 第21場面
后の宮への啓
あらすじ・人物・読み方
薫は后の宮に浮舟への思いを漏らし、宮は小宰相に、僧都の語った話を薫へ伝えるよう命じる。
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大将は、この、果ての業などを、させて、「儚くて、終わってしまったな」と哀れに思う。あの、常陸の、子どもは、冠をした者は、蔵人にして、わが御役所の、将監になどして、労わった。
「童である中で、清らかな者を、近く、使い慣らそう」と、思っていた。雨などが降って、静かな夜、后の宮に、参った。御前が、穏やかな日で、御物語などを、申し上げる、序でに、
「不思議な、山里に、年ごろ、通って、見ていたのを、人の誹りがありましたのも、そうなるべきことでしょう。誰も、心の寄る、方の事は、そのようである、と思いなして、なお、時々、見ていたのを、所の性でしょうかと、心痛く、思いなってしまった、後は、道も遥かな、心地がして、
久しくいませんのを、先頃、物の便りに行って、儚い世の、様子を、取り重ねて、思ったのに、わざわざ、道心を起こすべく、造り置いてあった、
聖の、住処と、思われました」と、啓すのに、あの事を、思い出して、たいそうかわいそうなので、「そこには、恐ろしい、物が、住んでいるのだろうか。どのようにして、あの人は、亡くなったのか」
と、お問いになるのを、「なお、続きを、思い寄せる方だ」と思って、「そうでしょう。そのような、人離れた、所は、良くない物が、必ず、住み着きます。亡くなった様子も、たいそう不思議です」
と言って、詳しくは、申し上げない。「なお、このように、忍んでいる筋を、聞き現わした」と、思うだろうのが、かわいそうに思われ、宮が、物をばかり思って、その頃は、病になっていたのを、思い合わすのにも、さすがに、心苦しくて、
「方々に、口入れし難い、人の上だ」と、思い止めた。小宰相に、密かに、「大将が、あの人の事を、たいそう哀れと思って、おっしゃったのに、かわいそうで、打ち出してしまいそうだったけれど、それでもないだろう、物の故と、遠慮がちで。
君が、一々、聞き合わせた。片端な事は、取り隠して、そのような事が、あったと、大方の、物語の、序でに、僧都が言った事を、語れ」
とおっしゃらせる。「御前にさえ、包ませなさることを、まして、他人は、どうして」と聞こえさせるけれど、「様々な、事でしょう。また、私は、かわいそうな、事があるのだ」
とおっしゃらせるのも、心得て、面白いと、お目にかかる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第53冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。