御伽草子「浦島太郎」 / 第2場面
女房との出会い
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あらすじ・人物・読み方
小舟にただ一人乗っていた美しい女房は、本国へ送ってほしいと泣いて頼む。同情した太郎は同船し、龍宮の宮殿に着く。女房は夫婦の契りを申し出て、太郎は承諾する。
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不思議に思い、ためらって見ていると、美しい女房が、ただ一人波に揺られて、しだいに太郎が立っている所へ着いた。
浦島太郎が申したことには、あなたはどのような人でいらっしゃれば、このような恐ろしい海上に、ただ一人で乗っておいでなのですかと申したところ、
女房が言ったことには、それが、ある方へ便船をお願いして乗っていたところ、折しも波風が荒く、人々が大勢海の中へ投げ入れられてしまい、心ある人がいて、私をこの端舟に乗せて離してくださったのです。
悲しく思い、鬼の島へでも行くのだろうかと、行く方も知らないありさまです。たった今、人にお会いできました。この世のものとも思われない御縁でございます。虎や狼でさえ、人を捕らえようとするものでしょうにと言って、さめざめと泣いた。
浦島太郎も、さすがに岩や木ではないので、かわいそうに思って、曳き綱を取って〔舟を〕引き寄せた。
さて女房が申したことには、ああ、私どもを、本国へ送ってくださいませ。ここで棄てられましたら、私はどこへどうして行けばよいのでしょう。お棄てになりましたら、海の上で物思いに沈むのも〔死ぬのも〕同じことでございましょうと、かき口説いてさめざめと泣いたので、浦島太郎もかわいそうに思い、同じ船に乗り、沖の方へ漕ぎ出した。あの女房の教えに従って、はるか十日余りの船路を送り、ふるさとへ着いた。
さて船から上がり、どんな所だろうと思うと、ゑろがね〔白銀か〕の築地を突いて、黄金の甍を並べ、門を建て〔てある〕。どのような天堂のような住まいも、これにはどうして勝ることがあろう。この女房の住む所は、言葉にも及ばず、申し上げるのもおろかなほど〔見事〕であった。
さて女房が申したことには、一樹の影に宿り、一河の流れを汲むことも、みな他生の縁なのです。まして、はるかな波路を、はるばるとお送りくださったことは、ひとえに他生の縁ですから、どうして苦しいことがありましょう。私と夫婦の契りを結んでくださって、同じ所で明かし暮らしてくださいませんかと、こまごまと語った。
浦島太郎が申したことには、お言葉に背くわけにはまいりませんと申した。
さて、偕老同穴の語らいも浅からず、天にあれば比翼の鳥、地にあれば連理の枝と契ろうと、互いに鴛鴦の契りを交わし、浅からぬ仲で、明かし暮らされた。
底本:『御伽草子 後』今泉定介・畠山健校定、吉川半七、明治24年[1891](国立国会図書館蔵 913.49-O-I)所収「浦島太郎」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治24年(1891)今泉定介・畠山健校定『御伽草子 後』(吉川半七、国立国会図書館蔵 913.49-O-I)所収「浦島太郎」の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本は渋川版の本文を明瞭な字形で伝える明治の校定本で、通行字体・現行仮名へ写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。