狂言「附子」 / 第3場面
砂糖を食べ尽くす
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あらすじ・人物・読み方
附子の正体は砂糖だった。二人は代わる代わる食べ尽くし、互いに「主人に言いつける」と脅し合っては「戲言だ」と笑う。太郎冠者は言い訳作りに、次郎冠者に主の秘蔵の掛物を破らせる。
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次郎冠者「なかなか(その通り)。太郎冠者「砂糖だ。次郎冠者「砂糖だ。
太郎冠者「まず食べてみよ。次郎冠者「どれ。と言って次郎冠者も食べてみる。次郎冠者「まことに砂糖だ。
太郎冠者「これを食わせまいと思って、附子だの毒だのと仰せられたのだ。次郎冠者「その通りだ。太郎冠者「さてさて、うまいことだ。次郎冠者「うまくて、口が離せない。
と言って互いにだまし合う。次郎冠者は蓋へ取り分けて食べる。次郎冠者「おお、そればかり一人で食べずに、わしにも食わせろ。太郎冠者「等分にせい。次郎冠者「心得た。
と言って互いにそうし合って、みなみな食べる。太郎冠者「ほほ、これは皆食べた。次郎冠者「わしも皆食べたわ。太郎冠者「おお、よいことをなされた。次郎冠者「何と。
太郎冠者「これを食わせまいと思って、附子だの毒だのと仰せられた物を、このように皆食べて。わしは知らぬ、お帰りになったらまっすぐに申し上げようぞ。
次郎冠者「さてさて、お前はひどいことを言うものだ。わしが見ていたあの桶の物を、無理にと言って、ひもを解いて食べ始めたのもお前ではないか。わしは知らぬ、お帰りになったらまっすぐに申し上げるぞ。
太郎冠者「やい、これは冗談だ。次郎冠者「では言い訳はどうする。太郎冠者「あのお掛物を破れ。次郎冠者「あれを破れば言い訳になるか。太郎冠者「おお、言い訳になる。早く破れ。次郎冠者「それならば破るぞ。太郎冠者「破れ。次郎冠者「ざらり(破る音)。太郎冠者「おお、よいことをなされた。次郎冠者「何と。
太郎冠者「この附子は、たかが砂糖だから、いま言い付けられてもいくらでも調えられる。またあのお掛物は、牧溪和尚の墨絵の観音だといって、大切になさっていたお掛物をあのように破ってしまった。お帰りになったらまっすぐに申し上げようぞ。
底本:『和泉流狂言大成 第4巻』山脇和泉著、わんや江島伊兵衛、大正8年[1919](国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
大正8年(1919)山脇和泉著『和泉流狂言大成 第4巻』(わんや江島伊兵衛、国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」(和泉流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の字句を残して通行字体に写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添えています。