ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第6帖 末摘花 / 第11場面

行幸の準備と途絶える訪れ

あらすじ・人物・読み方

宮中と大殿では行幸の準備が進み、姫君のもとへの源氏の訪れは遠のく。

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大臣が、夜になって宮中から退出なさるのに、お誘いを受けて、大殿の邸へおいでになった。行幸のことを、おもしろい催しとお思いになって、公達が集まって、お話しなさったり、おのおの舞をお習いになったりするのが、そのころの日々のことで、楽器の音も、いつも以上に耳を騒がせて、互いの組が競い合い、普段の管弦の遊びとは違って、大篳篥や尺八の笛などを、大きな音で吹き立て、太鼓までも、欄干のもとへ転がし寄せて、自分の手で打ち鳴らし、演奏していらっしゃる。

〔源氏は〕お暇がない様子で、切実に思っていらっしゃる所へだけは、こっそりお出かけになるが、あちらの邸へは、まるきり様子のわからないまま、秋が暮れ果てた。それでも待ち頼みにしてきたかいもなく、日が過ぎてゆく。行幸が近くなり、試楽などで騒ぐころ、命婦は〔宮中へ〕参った。〔源氏は〕どうしているかなどとお尋ねになって、お気の毒だとは、

お思いになる。〔命婦は姫君の〕ご様子を申し上げ、「あまりにこのように冷淡なお気持ちは、おそばでお世話する者まで、つらく存じます」などと、泣き出しそうに思っている。奥ゆかしく取り扱って終えようと思っていたことを、〔源氏が〕ぶち壊してしまわれた、思いやりもなく、と、この人〔命婦〕が思っているだろうことまで、〔源氏は〕お考えになる。

ご本人が、何もおっしゃらず、物思いに沈んでいらっしゃるであろう様子を、ご想像になるにも気の毒なので、「暇のない時なのだよ。どうにもならない」と、ため息をつかれて、「物思いを知らないようなあの心を、少し懲らしめようと思うのだよ」と、ほほ笑んでいらっしゃるのが、若々しくかわいらしいので、〔命婦は〕自分もつい笑顔になる気がして、なんと困ったこと、人から恨まれなさるお年頃だこと。思いやりが乏しく、ご自分の思いどおりになさるのも無理はない、と思う。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。