第6帖 末摘花 / 第10場面
二条院での朝
あらすじ・人物・読み方
源氏は姫君との対面を思い返し、訪れた頭中将と宮中へ向かう。
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二条院にお帰りになって、横におなりになっても、やはり、思うとおりにはいかない世の中なのだなと、あれこれお考えになって、軽々しくは扱えない相手のご身分を、気の毒にお思いになるのだった。
あれこれ思い乱れていらっしゃるところへ、頭中将がおいでになって、「ここではなさらない朝寝ですね。何か訳がおありなのでしょうと、思われるのでございます」と言うと、〔源氏は〕起き上がって、「気楽な独り寝の床なので、つい気が緩んだのです。宮中からですか」とおっしゃると、「〔冒頭の語義未詳〕退出して参った、そのままです。
朱雀院への行幸の、楽人や舞人が、今日お決めになるということを、伺いましたので、大臣にもお伝え申そうと、退出して参りました。そのまま、戻って参らねばなりません」と、急ぐ様子なので、〔源氏は〕「それならご一緒に」と言って、おかゆと、こわ飯を召し上がり、客人にも、
〔源氏は、食事を〕差し上げになって、続けて〔車を〕引き出してあったけれど、同じ車にお乗せ申し上げて、〔中将は〕やはりずいぶん眠そうですねと、目を留めて言い、隠していらっしゃることが多い、とお恨み申し上げになる。
多くの事柄が決められる日で、宮中に一日中お仕えになった。あちらへは、せめて手紙だけでもと、気の毒に思い出して、〔お送りになったのは〕夕方のことだった。雨が降り出し、出歩くのもわずらわしかったので、あの荒れた邸で雨宿りをしようとは、お思いにならなかったのだろうか、あちらでは、待つ時刻も過ぎて、命婦も、お気の毒なご様子だと、つらく思うのだった。
ご本人は、お心の中で恥ずかしくあれこれ思い続け、今朝届くはずのお手紙が、日暮れになってしまったことも、特別にあれこれと区別してお考えにはならなかった。
夕霧が晴れる気配もまだ見えないのに、心の晴れなさをいっそう募らせる、宵の雨ですね。
「雲の切れ間を待つ間は、どれほど待ち遠しいことか」とある。おいでになりそうもないご様子を、女房たちは胸もつぶれる思いで受け止めるが、それでも、お返事申し上げなさいませと、口々に勧めるけれど、〔姫君は〕いっそう思い乱れていらっしゃるところなので、ほんの形ばかりにも、言葉をおつなぎになれないので、夜が更けてしまうといって、侍従が、例のようにお教え申し上げる。
晴れない夜の月を待つ、この里の思いを想像してください。あなたは同じ心で物思いをしていらっしゃらなくても。
〔姫君は侍従に〕口でせき立てられて、年月のたった紫色の紙なので、色合いも時代遅れで古びているのに、筆跡は、そうは言っても力強く、仲貞風の流儀で、びっしりとお書きになっている。〔源氏は〕見るかいもなく、脇へお置きになる。
どのように思っているだろうと想像するのも、気が楽ではなく、こんなにつらいことになって後悔している、などと言っているのだろうか、そうはいっても、どうしようがあろう、自分は、それでも気長に、最後まで面倒を見ようと、思い直される。そのお気持ちを知らないので、あちらでは、ひどくお嘆きになるのだった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。