第6帖 末摘花 / 第14場面
正月の訪問
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元日のころも過ぎ、今年は男踏歌があるはずなので、例の場所では、〔公達が〕にぎやかに演奏していらっしゃるところ、辺りは騒がしいけれど、〔源氏には〕寂しい邸のことが、気の毒に思いやられるので、七日の節会が終わり、夜に入って帝の御前から退出なさったのを、そのままご宿直所にお泊まりになったようにして、夜が更けてからおいでになった。
いつものありさまよりは、邸内の気配にも少し活気があり、世間並みになっている。姫君も、少しやわらいだ様子を、身につけていらっしゃる。どうだろう、改めて変わっていた時には、と、ついあれこれお考えになる。
日の差し出すころまで、わざとぐずぐずして、お出になる。東の妻戸を押し開けると、向かいの廊にも屋根がなく、荒れているので、日差しがたちまち差し込んで、少し降った雪の光で、とてもはっきりと奥が見える。〔姫君は源氏が〕直衣などをお召しになるのを、外へ目を向けてご覧になり、少し前へ出て、横へ向けていらっしゃる頭の形と、〔髪が〕こぼれ出ている様子は、たいそう美しい。〔源氏は〕よく変わったところを見つけられたなら、と自然にお思いになって、格子をお引き上げになった。
以前の、たいそうおかしかった経験に懲りて、全部は開け放たず、脇息を押し寄せて、もたれかかり、鬢の根元の乱れているのをお整えになる。ひどく古風な鏡台、唐櫛笥、髪上げの箱などが取り出されている。それでも、男君の道具がそのくらい備わっているのを、いじらしくも、おもしろくもご覧になる。
女君のお召し物は、今日は世間並みに整っているように見える。やはり、先の箱に込めた心遣いを、そのまま〔身につけている〕のだった。〔源氏は〕そこまではお考えにならず、おもしろい紋が付いて目立つ上着だけを、変だとはお思いになるのだった。
「今年こそは、お声を少しお聞かせください。待ち遠しいものは、さておいても、お気持ちが改まるのを、見たいのです」とおっしゃると、〔姫君は〕「さえずる春」と、ようやく震える声で言い出した。「そうでしょう。年の改まったしるしですね」と、少しお笑いになって、「夢かと見ますよ」と、口ずさんでお出になるのを、〔姫君は〕見送って、寄りかかるように伏せていらっしゃる。口をおおっている、その横顔から、やはりあの末摘花〔のような鼻〕が、たいそうあざやかに突き出している。見苦しいことだ、と自然にお思いになる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。