ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第6帖 末摘花 / 第15場面

紫の君との遊び

あらすじ・人物・読み方

二条院へ帰った源氏は紫の君と戯れ、鼻に紅を塗って見せる。

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現代語で読む

二条院にお帰りになると、紫の君が、たいそうかわいらしい少女で、紅色も、このように、心の引かれることもあるものだ、と見えるところへ、紋のない、桜色の細長をしなやかに着こなして、

〔紫の君が〕無邪気にしていらっしゃる様子は、たいそうかわいらしい。古風なお祖母様の名残で、お歯黒もまだだったのを、〔源氏が〕お手入れをおさせになっていたので、眉のあたりもくっきりと整って、その様子もかわいらしく、たいそう美しい。どうして自分から、こんなにつらい世のことにかかずらっているのだろう、こんなに愛おしい人を、じっと見て暮らしもしないで、とお思いになりながら、いつものように、一緒に人形遊びをなさる。絵などを描いて、色をお付けになる。あれこれと、おもしろく遊び散らしていらっしゃるのだった。

〔源氏は〕自分も描き添えなさる。髪のたいそう長い女をお描きになって、鼻に紅を付けてご覧になると、絵に描いてさえも、見るのがつらい姿をしている。折しも、ご自分の姿が鏡台に映っているのが、たいそう美しいのをご覧になって、ご自分の手で、この赤い鼻を描き付け、あざやかにしてご覧になると、こんなに美しい顔でさえ、そのようなものが交じったなら、見苦しいはずなのだった。

姫君は見て、ひどくお笑いになる。「私がこんな不格好になってしまったら、どうなるだろう」とおっしゃると、「いやなことでしょうね」と言って、本当に染み付くのではないかと、気をもんでいらっしゃる。〔源氏は〕拭くふりだけをして、「どうしても白くならない。つまらない遊びをしたものだ。帝は何とおっしゃるだろう」と、たいそうまじめにおっしゃるのを、〔姫君は〕お気の毒だと思って、寄って来てお拭きになると、

〔源氏は〕「さあ、こんなふうに、色を塗り足しなさらないで。赤いくらいなら、我慢しましょう」と、冗談をおっしゃる様子は、たいそうほほえましい男女のお姿とお見えになる。

日がたいそううららかな中で、早く〔花を〕と、霞のかかる木々の待ち遠しい中にも、梅が色づき、ほほ笑むように一面に咲いているのが、格別に目に入る。階隠しのもとの紅梅は、たいそう早く咲く花で、色づいていたのだった。

紅の花〔鼻〕が、訳もなく疎ましく感じられます。梅の伸びた枝は、心引かれるのだけれど。

いやはや、と、訳もなく自然にため息をつかれる。このような方の、その後はどうなったのだろう。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。