第6帖 末摘花 / 第6場面
返事のない姫君を思う
あらすじ・人物・読み方
二人は姫君と住まいを思い描き、それぞれに便りを送ります。返事がなく、中将はいらだちを募らせます。
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二人は、先ほどの琴の音を、お思い出しになって、寂しげな住まいの様子なども、〔想像の中で〕趣向を変えて、おもしろく、あれこれ思い続ける。想像の中で、とても魅力があって、かわいらしい人が、あのように、年月を重ねて暮らしていたところに、初めて出会って、たいそう気の毒でならなければ、人にも騒ぎ立てられるほど、自分の心も、みっともなく乱れるだろうか、などとまで、中将は、思っていた。
この君が、こうして思わせぶりに通い歩いていらっしゃるのを、まさか、このままでお過ごしになってしまうことがあろうかと、何となく、妬ましく、不安に思っていた。
その後、こちらからもあちらからも、お手紙などをお送りになったらしい。どちらにも、返事は来ない。様子がわからず、じれったいのも、あまりに度が過ぎているなあ。ああいう暮らしをしている人なら、物の情趣を知っている様子を、ささいな草木や、空の様子につけても、感じ取ったことを形にするなどして、人柄を、こちらで推し量れる折があってこそ、しみじみ心を引かれるだろうに。慎み深いといっても、こんなにも、ひどく引っ込んでいるのは、気に入らず、田舎びている、と、中将は、源氏よりも一層、いらだっていた。
いつものように、〔源氏に〕隠し事をなさらない気持ちで、「あの件のお返事は、ご覧になりますか。試しに、それとなく言ってみたのは、面目を失うばかりで、終わってしまいました」と、〔中将が〕愚痴を言うと、やはりそうだ、言い寄っていたのだな、と、〔源氏は〕つい微笑まれて、「さあ、ぜひ返事を見ようとも思わないせいか、見たというほどでもありません」と、お答えになるのを、〔中将は、相手を〕区別していたのだなと、妬ましく思う。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。