ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第23帖 初音 / 第9場面

常陸の宮の御方を訪れる

あらすじ・人物・読み方

源氏は常陸の宮の御方(末摘花)を訪れ、その衰えた姿と寒げな装いを気の毒に思う。衣のことを尋ねると、鼻の赤い兄が打ち解け過ぎるほどに答え、源氏は向かいの院の御倉を開けさせて絹や綾を贈る。

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現代語で読む

常陸の宮の御方〔末摘花〕は、身分のほどがあるので、〔源氏は〕気の毒にお思いになって、人目を飾る程度には、たいそうよくお世話申し上げなさる。昔、盛りのように見えた御若髪も、年月のうちに衰えていき、まして、滝の淀みのように恥ずかしく見える横顔などを、痛々しくお思いになるので、〔源氏は〕正面にもお向きにならない。

柳〔の色合い〕が、本当に興ざめに見えるのも、お召しになっている人柄によるのだろう。光沢もなく黒い掻練の、しゃきっと張った一襲、そのような織物の袿をお召しになっているのが、たいそう寒そうで気の毒である。重ねの衣などは、どのように仕立ててあるのだろうか。

お鼻の色だけが、霞にも紛れるはずがなく華やかなので、〔源氏は〕お心にもなく嘆かれて、わざわざ御几帳を引き直して隔てなさる。かえって、女〔末摘花〕はそれほどにもお気になさらず、今は、このようにしみじみと長く続く〔源氏の〕お心のほどを、穏やかなものとして打ち解けてお頼み申し上げているご様子が、しみじみと感じられる。

このような方〔末摘花〕に対しても、並の人ではない、痛々しく悲しい人のご様子とお思いになるので、しみじみと、自分だけでもと、お心を留めなさっているのも、ありがたいことである。お声なども、たいそう寒そうに、震えながらお話し申し上げなさる。〔源氏は〕ご覧になるのに困って、

「お衣類のことなど、お世話申し上げる人はおりますか。このように気安いお住まいでは、ただたいそう打ち解けた様子で、ゆったりとくつろいでいるのがよいのです。上辺ばかり繕ったお装いは、興ざめです」

と申し上げなさると、〔末摘花は〕堅苦しく、さすがに笑って、

「醍醐の阿闍梨の君のお世話をしておりますので、衣類も縫うことができません。皮衣までも取られてしまった後は、寒くございます」

と申し上げるのは、たいそう鼻の赤い御兄であった。心が美しいとは言いながら、あまりに打ち解け過ぎていると〔源氏は〕お思いになるけれど、ここでは、たいそう真面目で風変わりな人でいらっしゃる。

「皮衣はたいそう結構です。山伏の蓑代わりの衣にお譲りになれば済むでしょう。さて、この手入れのない白妙の衣は、七重にでも、どうしてお重ねにならないのですか。そうすべき折々には、うっかり忘れていることも思い出させてください。もともと愚かで、のんびりした心の怠りのために〔忘れるのです〕。まして御方々の紛らわしい競い合いの中では、自然とそうなるのです」

とおっしゃって、向かいの院の御倉を開けさせなさって、絹や綾などを差し上げさせなさる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第23冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。