第44帖 竹河 / 第2場面
正月の集い
あらすじ・人物・読み方
睦月、大納言や夕霧らが三条の宮に集い、昔を語る。夕方、四位侍従の薫が参り、姫君への思いをほのめかす。
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現代語で読む
睦月の朔日の頃、尚侍の君の御兄弟の大納言や、「高砂」を謡ったとかいう藤中納言、故大殿〔鬚黒〕の長男、真木柱と同腹の兄弟などがいらした。右の大臣〔夕霧〕も、御子様たち六人を皆引き連れていらした。御容貌をはじめとして、見飽きることのない人の御様子・御威勢である。
君たちも、それぞれたいそう清らかな様子で、年の頃よりは、官位が進みながら、何事を考えていらっしゃるのだろうと見えたに違いない。いつもと変わらず、蔵人の君〔蔵人少将〕は、大切に育てられた様子は格別だけれど、うち沈んで思い事のある顔つきである。
大臣〔夕霧〕は、御几帳を隔てて、昔と変わらず御物語を申し上げなさる。
「これといった用もなくては、しばしばお受け取りいただけません。年を重ねるにつれて、宮中へ参る以外の外出は、すっかり不慣れになっておりますので、昔の御物語も、申し上げたい折々を多く過ごしてしまっておりますよ。
若い男どもは、しかるべき用にはお召し使いください。必ずその志をお目にかけよと、戒めてあります」などと申し上げなさる。
「今は、このように、世に時を過ごす数にも入らないようになってゆく有様を、お思い数えくださるにつけても、過ぎ去った御事〔亡き源氏や故殿のこと〕が、ますます忘れがたく思われます」
とお申しになったついでに、〔冷泉〕院より仰せになっていることを、ほのめかして申し上げなさる。
「しっかりした後見のない人の交際は、かえって見苦しいことになろうかと、思い悩んでおります」
とおっしゃると、
「帝の御所に〔お誘いの〕仰せのあるように承りましたが、どちらにとお定めになるべきことでしょうか。院は、確かに、御位をお退きになったので、盛りを過ぎた心地がしますが、世に得がたい御様子は、いつまでも古びないでいらっしゃるようですのに、程よく成長する女子がおりましたらと、思い始めてはいるものの、立派な方ばかりの御中に、交じるべき者がおりませんで、残念に思われます。
そもそも、女一の宮の女御〔冷泉院の女御〕は、お許しくださるでしょうか。これまでの人々も、そのような遠慮から、行き詰まることもございますよ」
とおっしゃると、
「女御は、所在なく穏やかになってしまった有様も、同じ心で後見して、慰めてほしいと、あの〔冷泉院〕がお勧めになるにつけて、『どうだろう』とさえ思い寄るのですよ」
と申し上げなさる。
あれこれの人々が、ここに集まっていらして、三条の宮〔冷泉院〕へ参りなさる。朱雀院の昔気質の人びとも、六条院の方々の者も、それぞれの縁につけて、やはりあの入道の宮〔朱雀院〕の所へは、なかなかお参りなさらないらしい。この殿〔玉鬘邸〕の左近中将、右中弁、侍従の君なども、そのまま大臣〔夕霧〕の御供に出かけなさった。引き連れていらっしゃる威勢は格別である。
夕方になって、四位侍従〔薫〕がいらした。その辺りの物慣れた若君達も、大勢それぞれに、どれが劣っていただろうか〔皆立派だった〕。皆感じがよかった中に、遅れてこの君がお出になってきたのが、格別に目に留まる心地がして、例によって、物を褒めたがる若い女房たちは、「やはり、格別だわ」などと言う。
「この殿の姫君のお側には、この方こそ並べて見たい」
と、聞き苦しく言う。本当に、たいそう若く優雅な様子で、お振る舞いになる匂いや香りなど、世の常ではない。「姫君と申し上げる〔薫のような〕方と心を通わせる人は、本当に人より勝っているのだろうと、〔姫君も〕見てお分かりなのだろう」と思われる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。