ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第47帖 総角 / 第26場面

雪の日に籠もる薫

あらすじ・人物・読み方

雪の日、薫は宇治に籠もり、亡き大君を思い出して独詠する。女房たちの語らいに、往時のことがしのばれる。

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現代語で読む

雪が空を暗くして降る日、一日中物思いに暮らして、世の人が殺風景なものと言う師走の月夜が、曇りなく差し出ているのを、簾を巻き上げて〔中の君が〕御覧になると、向かいの寺の鐘の声に、枕から耳をそばだてて、今日も暮れたのだと、かすかな響きを聞いて、

月に遅れまいと空を行く月を慕うけれど、結局いつまでも住み続けるべきこの世ではないのだから

風がとても激しいので、蔀を下ろさせなさると、四方の山の鏡のように見える汀の氷が、月明かりにたいそう趣深い。「京の邸で限りなく磨く鏡も、これほどではあるまい」と思われる。「〔大君が〕かろうじて生き返っていらっしゃったなら、共に申し上げたであろうに」と思い続けるのは、胸に余る思いがする。

恋いわびて死ぬ薬が知りたいほどなので、雪の山にでも跡を消してしまいたい

「半分だけの偈を教えてくれる鬼がいてほしい、それにかこつけて身も投げよう」とお思いになるのは、汚らわしい聖の心であったことだ。

〔中の君が〕人々を近くに呼び出して、物語などをさせなさる様子などが、たいそう理想的で穏やかで思慮深いのを、拝見する人々のうち若い者は、心に刻んで素晴らしいと思い申し上げる。年老いた者は、ただ残念で悲しいことを、ますます思う。

「〔大君の〕御気分が重くなられたことも、ただこの宮〔匂宮〕のことを、思いがけず拝見なさって、人笑いになるほどひどいこととお思いだったようですが、さすがにあの御方〔匂宮〕には、このように思っていると知られまいと、ただ御心一つで世を恨んでいらっしゃったようなので、わずかな果物さえ召し上がって口にされず、ただ弱りに弱っていかれたようです。

表面では、それほど大げさに思慮深くも振る舞われず、内心では限りなく、何事もお思いだったようですが、亡き宮〔八の宮〕の御戒めにさえ背いてしまったことと、やむなく〔匂宮の〕御身の上を思い悩み始めたのでした」

と申し上げて、折々に〔大君が〕おっしゃったことなどを語り出しながら、誰も彼も泣き惑うことが尽きない。

「自分の心から、つまらないことを〔大君に〕思いなさるようにしてしまったことよ」と取り返したく思い、世の中全てがつらい上に、念誦をますますしみじみとなさって、うとうとする間もなく夜を明かしなさると、まだ夜が深い頃の雪の気配が、たいそう寒そうなのに、人々の声が多くして、馬の音が聞こえる。

「誰が、この真夜中に雪を分けて来るだろう」

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第47冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。