第47帖 総角 / 第27場面
雪の夜の訪問
あらすじ・人物・読み方
匂宮は雪を分けて宇治を訪れるが、中の君は物越しにしか対面しない。二人は行く末を契る歌を交わす。
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現代語で読む
と、大徳たちも驚き思っていると、宮〔匂宮〕が、狩の御衣姿でひどくやつれて、びしょ濡れでお入りになったのだった。〔宮が戸を〕お叩きになる様子で、そうだとお聞きになって、中納言〔薫〕は、隠れている方に入って、忍んでいらっしゃる。〔中の君の〕御忌は日数が残っていたけれど、心配で思い悩んで、一晩中、雪に迷わされてお越しになったのだった。
日頃のつらさも紛れそうなほどだが、対面なさる気もせず、思い嘆いていた様子が恥ずかしかったのを、そのまま見直されずに終わったことも、今から後の御心が改まるのは甲斐がないだろうと深く思って過ごしていらっしゃるので、誰も彼もひどく事情を申し上げて知らせながら、物越しで、日頃の怠りについて尽きずにおっしゃるのを、〔中の君は〕じっと聞いていらっしゃる。
これもたいそうあるかないかという有様で、「〔大君に〕遅れなさるはずがないのに」と聞こえる御様子の心苦しさを、「心配でつらい」と、宮〔匂宮〕もお思いになっていた。
今日は、御身を捨てて、泊まってしまわれた。「物越しでなく」とひどくすがっておっしゃるけれど、
「今もう少し、物事が分かるようになる頃までおりましたら」
とだけ申し上げて、つれないのを、中納言〔薫〕も様子をお聞きになって、適当な人を呼び出して、
「御身分に反して、心浅いようなおもてなしが、昔も今も心憂かったここ数ヶ月の罪は、そのようにお思いのも当然のことですが、悪くない様子にと、お考えいただけるでしょう。このようなことは、まだ御存知ない御心で、苦しくお思いでしょう」
などと、ひそかに賢そうに取りなすので、ますますこの君〔中の君〕の御心も恥ずかしくて、申し上げることができない。
「あきれるほど心憂くていらっしゃる。申し上げた様子をも、すっかりお忘れになったことだ」
と、並々でなく嘆き暮らしなさった。
夜の様子は、ますます険しい風の音に、人にやられたのではなく自ら嘆き臥していらっしゃるのも、さすがに、いつものように、物を隔てて申し上げなさる。数々の神社を引き合いに出して、将来長く続くことをお誓いになるのも、「どうしてこんなに口馴れなさったのだろう」と、心憂いけれど、よそでつれないほどの疎ましさよりはしみじみと、人の心も和らぎそうな御様子を、一方的に疎んじ果てることはできなかった。ただ、じっと聞いて、
過ぎ去ったことを思い出すのも儚いのに、行く末にかけて何を頼みにできましょう
と、かすかにおっしゃる。かえって気が晴れず、心もとない。
行く末を短いものとお思いなら、目の前にいる私にだけでも背かないでください
何事もこのように見るほどのこともない世の中を、罪深いものとお思いなさるな」
と、あらゆることで取り繕いなさるけれど、
「気分も苦しくて」
と言って〔中の君は〕入ってしまわれた。人が見るだろうこともたいそう体裁が悪くて、〔匂宮は〕嘆き明かしなさる。恨むのも当然なほどだが、あまりに憎らしくも思われて、つらい涙が落ちると、「まして〔中の君は〕どれほど思っているだろう」と、さまざまにしみじみと思い知られる。
中納言〔薫〕が、主人の方に住み慣れて、人々を気安く呼び使い、人も多くして食事を差し上げたりなさるのを、〔匂宮は〕しみじみともおかしくも御覧になる。〔中の君が〕たいそうひどく痩せて青ざめ、ぼんやりするほど物思いしているので、心苦しいと御覧になって、まじめにお見舞いなさる。
「昔の様子など、甲斐のないことだけれど、この宮〔匂宮〕にこそ申し上げよう」と思うけれど、口に出そうとするにつけても、たいそう心弱く、頑なに見え申し上げるのを憚って、言葉少なになる。声を上げてばかり泣いて、日数が経ったので、顔が変わっているのも、見苦しくはなく、ますます清らかで優美なのを、「女ならば、必ず心が移るだろう」と、自分のよからぬ御心の習いから思い寄るのも、何となく気がかりだったので、「どうにか人の非難も恨みも避けて、京に移そう」とお思いになる。
このように〔中の君が〕つれない一方で、内裏あたりでもお聞きになって、たいそう悪いはずだと思い悩んで、今日はお帰りになった。並々でなく言葉を尽くしなさるけれど、つれないのは苦しいものだという一節を思い知らせたくて、心が解けないままになった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第47冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。