第48帖 早蕨 / 第11場面
二条院への到着
あらすじ・人物・読み方
中君は二条院に到着し、匂宮自らの出迎えを受ける。その夜、三条の宮にいた薫は供人の報告に、嬉しさと嫉妬の入り混じった思いに沈む。
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現代語で読む
宵が少し過ぎてお着きになった。見たこともない様子で、目も輝くような殿造りの、三棟四棟と建ち並ぶ中にお車を引き入れて、宮は、早く早くとお待ちになっていたので、お車の側にご自身お寄せになって、お下ろし申し上げなさる。
お部屋飾りなどは、善美を尽くして、女房の部屋部屋まで、お心配りなさっていらしたことがはっきり窺えて、まことに理想的である。どの程度の待遇かとお考えになっていたご様子が、急にこのようにお定まりになったので、「並々ならぬご愛情なのだろう」と、世間の人びとも、どのような方かと驚いていた。
中納言は、三条の宮に、今月の二十日過ぎにお移りになろうとして、最近は毎日いらっしゃっては御覧になっているが、この院に近い距離なので、様子も聞こうとして、夜の更けるまでいらっしゃったところ、差し向けていた御前の人びとが帰ってきて、有様などをお話し申し上げる。
ひどくお気に召して大切にしていらっしゃるというのをお聞きになるにつけても、一方では嬉しいものの、やはり、自分の心ながら馬鹿らしく、胸がつぶれるようで、「取り返したいものだ」と、繰り返し独り言をおっしゃって、しなてる琵琶湖に漕ぐ舟のように、ままならないながらも、一夜お会いしたことがあったのに。と文句をつけたくもなる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第48冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。