ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第48帖 早蕨 / 第12場面

六の君の裳着と夕霧の思案

あらすじ・人物・読み方

夕霧は六の君の裳着を二十日過ぎに行う。中納言を婿にと打診するが、薫の返事はそっけなく、夕霧は恨みながらも強くは勧められない。

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右大殿は、六の君を宮に差し上げなさることを、今月にとお決めになっていたのに、このように思いがけない人を、婚儀より先にという顔で大事にお迎えになって、寄りつかずにいらっしゃるので、「たいそうご不快でいらっしゃる」とお聞きになるのもお気の毒で、お手紙は時々差し上げなさる。

お裳着の儀を、世間の評判になるほど盛大にご準備なさっているのを、延期なさるのも物笑いになるだろうから、二十日過ぎにお着せ申し上げなさる。

同じ一族で変わりばえがしなくとも、この中納言を他人に譲るのが残念なので、「婿君にしようか。長年人知れず恋い慕っていた人を亡くして、何となく心細く物思いに沈んでいらっしゃるというから」などとお考えつきになって、しかるべき人を介して様子を窺わせなさったが、

「世の無常を目の前に見たので、まことに気が塞いで、身も不吉に思われますので、何としても何としても、そのようなことは気が進みません」と、その気のない旨をお聞きになって、

「どうして、この君までが、真剣になって申し出る言葉を、気乗りしないようにあしらってよいものか」とお恨みになったが、親しいお間柄ながらも、人柄がたいそう気のおけるお方なので、無理にお勧め申し上げることはできなかった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第48冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。