第48帖 早蕨 / 第14場面
匂宮の疑心
あらすじ・人物・読み方
女房たちは薫への遠慮のない待遇を勧めるが、中君はためらう。参内する匂宮は薫に言葉をかけ、中君の「疑はしき下の心」という返しに、薫は苦い思いを抱く。
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女房たちも、「世間一般の人のように、仰々しくお扱い申し上げなさいますな。この上ないご好意を、今こそ、拝見しご承知のご様子を、お見せ申し上げるべき時です」などと申し上げるが、人を介してではなく直にお話し申し上げることは、やはり気が引けるので、ためらっていらっしゃるところに、宮が、お出ましになろうとして、お暇乞いの挨拶にお渡りになった。たいそう美しく身づくろいし化粧なさって、見栄えのするお姿である。
中納言はこちらに来ているのであった、と御覧になって、「どうして、むやみに遠ざけて、外にお座らせになっているのか。あなたには、あまりにどうかと思われるほどに、行き届いたお世話ぶりでしたのに。私には愚かしいこともあろうかと心配されますが、そうはいっても、まったく他人行儀なのも罰が当たろう。近い所で、昔話を語り合いなさい」などと、申し上げなさるものの、
「そうはいっても、あまり気を許すのも、またどんなものでしょう。疑わしい下心があるかもしれません」と言い直しなさるので、どちらの方に対しても厄介だけれども、自分の気持ちにも、しみじみとありがたく思われた方のお心を、今さら疎かにすべきではないので、「あの方も思いもしおっしゃりもするよう、故姉君の身代わりとお思い申して、このように分かりましたと、お表し申し上げる機会があったら」とはお思いになるが、やはり、何やかやと、さまざまに心安からぬことを申し上げなさるので、つらく思われなさった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第48冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。