ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第49帖 宿木 / 第27場面

若君の五十日の祝い

あらすじ・人物・読み方

中の君の若君の五十日の祝いの準備が進められ、女二の宮の三条の宮への移転の日取りも定まる。

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現代語で読む

宮〔匂宮〕の若君が五十日におなりになる日を数え取って、その餅の準備を心にかけて、籠物、桧破籠などまで目を配っていらっしゃりながら、世間並みの一通りではないとお心を込めて、沈、紫檀、銀、黄金など、それぞれの細工をたいそう多く召し使わせなさるので、我も劣るまいと、いろいろなことをし出すようだ。

〔薫は〕ご自身も、例によって、宮〔匂宮〕がいらっしゃらない隙にお越しになっていた。気持ちのせいだろうか、今は少し重々しく高貴そうな様子まで加わったと見える。「今は、いくらなんでも、難しかった他愛ないことなどは紛れてしまわれただろう」と思うと、安心して、対面なさった。しかし、昔ながらの様子に、まず涙ぐんで、

「心にもない交わりが、たいそう思いもよらないものだと、世の中を思い乱れることが、ますます募っております」

と、間を置かずお嘆きになる。

「たいそう嘆かわしいお言葉ですね。人も自然にほのかに漏れ聞くことがございましょう」

などとはおっしゃるけれど、これほどおめでたいことどもにも慰まず、「〔大君を〕忘れがたくお思いになるだろう心の深さよ」としみじみお思い申し上げるにつけ、〔薫も〕疎かでなく思い知らされる。「〔大君が〕生きていらっしゃれば」と、残念に思い出し申し上げなさるけれど、「それも、私のありさまのように、羨むことなく身を恨むべきだったのだろう。何事も人数に入らなければ、世の人らしいこともありえないのだった」と思われるにつけ、ますます、あの、すっかり打ち解けて終わろうと思っていらっしゃった〔大君の〕心遣いは、なおたいそう重々しく思い出される。

若君をしきりに見たがり申し上げなさるので、恥ずかしいけれど、「どうして隔てた顔をしようか、やむないこと一つで恨まれるほかは、どうしてこの人のお心に背こうか」と思うので、〔中の君は〕ご自身ではどうともお答え申し上げず、乳母をして〔若君を〕差し出させなさった。

言うまでもないことだが、憎らしいはずがあろうか。恐ろしいほど白く美しくて、きゃっきゃっと物語し、微笑んだりなさる顔を見ると、自分のものとして見ていたく羨ましいのも、世への思いが離れがたくなったからだろうか。けれど、「言いようもなく亡くなってしまった人が、世間並みのありさまで、このような人〔子〕をも残しておいてくださったなら」とばかり思われて、この頃重々しくなっている御方〔女二の宮〕のもとへ、いついつなどとは思い寄られないのが、あまりにどうしようもない君〔薫〕のお心のようだ。このように女々しくひねくれて、真似をしなすのがお気の毒なことだ。

そのように悪く片意地な人を、帝が特にしきりに近づけて、親しくなさるはずもないのに、「真面目な方面のお心遣いなどは、無難でいらっしゃるのだろう」と推し量るべきである。

実に、これほど幼い様子を見せてくださるのも愛らしいので、いつもよりは物語などを細やかに申し上げるうちに、日が暮れたので、安心して夜を更かすことさえできないのを苦しく思われるので、嘆き嘆きお出になった。

「素敵な人のお匂いだこと。『折りつれば』とか言うように、鶯も尋ねて来そうだ」

などと、からかう若い人もいる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。