ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第51帖 浮舟 / 第11場面

文比べと雪の出立

あらすじ・人物・読み方

内裏の文比べで匂宮の歌が劣るとされ、浮舟の返歌への落胆も手伝って、匂宮は雪の夜に再び宇治へ向かう。

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浮舟・第11場面0 / 21
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如月の十日の頃に、内裏でお文作りになると言って、この宮も大将も参り合っていらっしゃった。折に合った物の調べどもに、宮のお声はたいそう素晴らしくて、「梅が枝」などを謡いなさる。

何事も人よりは格別に優れていらっしゃるお様子で、とりとめないことをお思い焦がれるのだけが、罪深かった。雪が急に降り乱れ、風なども激しいので、お遊びは早く止んだ。この宮のお宿直所に、人々が参りなさる。物を召し上がるなどして、お休みになっていた。

大将は、人に物を言おうとして、少し端近くお出になると、雪がだんだん積もるのが、星の光にほのかなのを、「闇はつまらない」と覚える匂いのお有様で、

「衣を片敷いて今宵もか」と、口ずさみなさるのも、儚いことを口ずさみにおっしゃるのも、不思議にあわれな気配を添えた人となりで、たいそう物深い様子だ。

言ったことがあるので、宮は寝た様子で、お心が騒ぐ。「並々には思わないようだ。片敷く袖を、私だけ思いやる心地がしていたのに、同じ心なのもあわれだ。侘しくもあるな。

これほどの本妻の人を置いて、私の方にまさる思いは、どうして付きようか」とねたましく思われなさる。明朝、雪がたいそう高く積もっているのに、お文を差し上げようとして、御前に参りなさったお容貌は、この頃たいそう盛りに清らかだ。

あの君も同じほどで、今二つ、三つ勝る違いか、少し年長な様子の用意などは、特に作ったようで、上品な男の本になるほどでいらっしゃる。

「帝のお婿として不足がない」と、世の人ももっともだと言った。才能なども、公的な方面も、後れずおいでになるだろう。お文を講じ終わって、皆が退出なさる。

宮のお文を、「優れている」と口々に褒め騒ぐけれど、何ともお聞き入れにならず、「どんな心地で、こんなことをも詠み出すのだろう」と、空にだけお思い惚けている。

あの人のお様子にも、ますます驚かれなさったので、驚くほど図っておいでになった。京には、友を待つほど消え残った雪が、山深く入るままに、次第に降り埋もれている。

いつもより無体な稀な細道を分けなさるほど、お供の人も、泣くほどに恐ろしく、煩わしいことまでも思う。案内の内記は、式部少輔が掛けていた。

どちらの官も、仰々しいはずの官でありながら、たいそうふさわしく、引き上げなどした姿も趣があった。

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底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第51冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。