半蔀 / 第2場面
女の出現と問答
あらすじ・人物・読み方
供養の場に白い花を手にした女が現れ、夕顔の花を供える。僧の問いに女は、この世になき人の霊であることをほのめかし、五条の何某の院に常は参る身と告げて、立花の陰に消える。
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シテ「手に取れば手ふさに穢れるほど、生けたまま、三世の仏に花をお供えします。」
ワキの言葉「不思議なこと、今までは草花ばかりが茂っていて人家も見えなかった中に、どこからか女性が一人お越しになり、白い花が独り笑うように眉を開いているとは、どのような花をお生けになるのでしょうか。」
シテ「愚かな御僧のお言葉ですね。黄昏時の折ですのに、どうしてそれとお分かりにならないのですか。とはいえ名は人めいて、賤しい垣根に掛かっているので、お分かりにならないのも無理はありません。これは夕顔の花でございます。」
ワキの言葉「なるほど、さぞかし夕顔の花でしょう。その花の主は、どのような方ですか。」
シテ「名乗らなくとも、終にはお分かりになるでしょう。私はこの花の陰から参りました。」
ワキ「この世にない人の、花の供養に逢うためでしょうか。それにしても、お名前をお名乗りください。」
シテ「名はありながら、亡き跡になってしまった、昔の物語です。」
ワキ「何某の院にも。」シテ「常に参っておりました、真実は。」地「五条あたりと夕顔は、黄昏のうちに夢となって、面影ばかりの亡き跡、立花の陰に隠れてしまった。」
底本:謡曲二百番:四流対照 下巻 芳賀矢一訂(金港堂書籍、明治42年)。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』下巻(金港堂書籍)所収「半蔀」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。