方丈記 / 第2場面
安元の大火
あらすじ・人物・読み方
安元三年の夜、樋口富小路から出た火は都の三分の一を焼き、多くの命を奪った。
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安元三年四月二十八日、酉の刻(午後六時ごろ)、風が激しく吹いて、穏やかでない夜、都の東南、樋口富小路から、火が出て、西北へと広がった。
火元は、樋口富小路とかいう、病人のいた家から出て、風にあおられ、朱雀門・大極殿・大学寮・民部省などが、一夜のうちに灰となって、都の中の三分の一に及び、男女大勢が死に、その数は千人に及んだ。
吹きなびく炎は、一、二町を越えて飛んでゆき、中にいた人は、煙にむせんで、あるいは焼け死に、あるいは目の前で〔家が〕焼け落ちた。財産や宝物を運び出そうとしても、煙の中にまぎれて、〔すべて〕灰と化して消えてしまった。
公卿の家が十六軒焼け、そのほか、数えきれないほどの家が焼けた。この火事は、かつて聞いたこともないほどの、大きな災いであった。
底本:『方丈記』正保4年[1647]村上平楽寺刊(京都・二条通玉屋町)・国立国会図書館蔵 857-80。本文画像:所蔵機関の公開資料。正保4年[1647]村上平楽寺刊『方丈記』(国立国会図書館蔵 857-80)の本文を原画像と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。