ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

謡曲「須磨源氏」 / 第2場面

鹽木の翁と若木の櫻

あらすじ・人物・読み方

釣りと鹽木運びで暮らす翁が若木の櫻を詠み、興範と言葉を交わす。興範は翁に源氏の物語を請う。

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謡曲「須磨源氏」・第2場面0 / 23
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シテの一声。「浮世の営みには懲りないはずの身が、なお懲り果てない。塩木よ。松ならで、また煙と見える。これこそ真柴の陰であろうか。

シテのサシ。「これは須磨の浦で、日暮(たんば)に釣り糸を垂れ、焼かない間は塩木を運んで、浮世を渡る者でございます。また、この須磨の山陰に一本の花がございます。名に聞く若木の桜でしょう。昔、光源氏のご旧跡も、この所にあったようです。ああ、私どものような賤しい身でありながら、昔の雨夜の物語を聞くにも袖を濡らし、繰り返し、ああ、私どものような賤しい身でありながら、昔の雨夜の物語を聞くにも袖を濡らし、山の薪の重さにも、思いの樒を折り添えて、あれが古墳だという花の、手向けの梢の折々に心を運ぶばかりでございます、繰り返し、あれが古墳だという花の、手向けの梢の折々に心を運ぶばかりでございます。

シテの言葉。「しばらく柴を下ろして、花でも眺めようと思います。ワキの言葉。「もし、そこの翁に、お尋ねしたいことがございます。シテの言葉。「何事でございましょう。ワキの言葉。「あなたは賤しい山賤でありながら、この花に眺め入って家路を忘れた様子です。もしや、この花は由緒のある木なのでしょうか。

シテの言葉。「賤しい山賤と承知しておりますが、恐れながら、あなたのほうこそ田舎者とお見受けいたします。さすがに須磨の若木の桜を、名木かとお尋ねになるとは、ずいぶん目新しいことでございますよ。

ワキの歌。「まことに須磨の山桜。名に聞く若木の花だといって、はるばるここに分け入って、シテ「わざわざ眺めようとのお心ざしで、ワキ「日もはや暮れて、須磨の浦の、シテ「それでは里にもお泊まりにならず、ワキ「野を分け山に、シテ「おいでになるのは、地の歌。「関所の者から何を言う者まで、名をとりどりにする営みであるのに、ただ心ない住まいだといって、人を賤しめなさいますな、繰り返し、関所の者から何を言う者まで、名をとりどりにする営みであるのに、ただ心ない住まいだといって、人を賤しめなさいますな。

ワキの言葉。「もし、翁。昔ここは光源氏のご旧跡。とりわけあなたは年経た方ですから、源氏のおんことを物語ってください。

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底本:謡曲二百番:四流対照 中巻 芳賀矢一訂(金港堂書籍、明治42年)。本文画像:所蔵機関の公開資料。

明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』中巻(金港堂書籍)所収「須磨源氏」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。