謡曲「夕顔」 / 第3場面
河原院の跡を問う
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あらすじ・人物・読み方
僧がこの地の名を問うと、女は融大臣が住んだ河原院の跡だと明かす。時代は隔たっても、光君が夕顔と契った因縁の地であるという。
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旅僧の言葉。「もし、そちらの女性に、お尋ね申したいことがございます。夕顔の言葉。「私のことでしょうか。何のご用でしょうか。旅僧「ところで、ここを何と申すのでしょうか。
夕顔の言葉。「これこそ、そうでございます。ここをば、何某の院と申すのでございます。
旅僧「不思議なこと。何某の山・何某の寺というのは、名の上だけの仮の言葉でしょうか。それとも、その名に定めた由来があるのでしょうか。お聞かせ願いたいものです。
夕顔の言葉。「だからこそ、初めから、わけありげな旅の方とお見受けしました。紫式部が筆の跡に、ただ何某の院と書いて、その名をはっきりとは現しませんでした。
しかしここは、古く融大臣がお住まいになった所です。その時代と隔たって、光君が、夕顔の露のようなはかない世に、この上ない思いをお見せになった。名も恐ろしい鬼の形も、そのまま苔むしている。河原の院とご覧ください。
旅僧「嬉しいこと。昔から名に聞く所を見ることができるとは。私どもも豊後の国の者、その玉藻のゆかりとも申せましょう。どうぞ今また、夕顔が露ほどのはかなさでおられた世語(物語)を、お語りください。その跡を、及ばぬ身ながら弔いましょう。
底本:謡曲二百番:四流対照 下巻 芳賀矢一訂(金港堂書籍、明治42年)。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』下巻(金港堂書籍)所収「夕顔」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。