謡曲「熊野」 / 第4場面
清水への道行
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あらすじ・人物・読み方
一行は清水寺へ詣で、熊野は御堂で母の回復を祈る。戻りの遅い熊野を、宗盛は太刀持に迎えに行かせる。
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地「袖を連ねて行く先に、雲かと見えて八重一重。咲く宮中の花盛り、名に負う春の景色であることよ。名に負う春の景色であることよ。
地「河原の面を過ぎて行けば、急ぐ心の間もなく。車大路や六波羅の、地蔵堂よと伏して拝む。
熊野「観音も同じ座におわし、闡提をも救う方便はあらたかで。母をお守りくださいませ。
地「まことに守りの末は正しく、頼む命は白玉の。愛宕の寺も打ち過ぎた。六道の辻とかいう所。
熊野「まことに恐ろしい、この道は、冥途へ通うのだという。心はそぞろに鳥部山へ。
地「煙の末も薄く霞み、声も旅の雁の横たわる。
熊野「北斗の星の曇りなき。
地「御法の花も開くよう。
熊野「経書堂はこれかしら。
地「その母を尋ねるという、子安の塔を過ぎて行けば。
熊野「春の日の中を行く馬の道。
地「はや、ほどもなく、ここがその。
熊野「車宿。
地「馬留め。ここからは花車、織り井の衣を播磨潟に。飾磨から徒歩の道、清水の仏の御前に念誦して、母の祈願を申し上げよう。
宗盛「誰かいるか。
太刀持「お側におります。
宗盛「熊野はどこにいるのか。
太刀持「まだ御堂におられます。
宗盛「どうして熊野は遅くなっているのか、急いでこちらへ来るよう伝えよ。
太刀持「かしこまりました。
底本:『謡曲全集 上巻』大町桂月・丸岡桂 校、至誠堂、明治45年[1912](国立国会図書館蔵 特63-605)所収「熊野」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治45年(1912)大町桂月・丸岡桂 校『謡曲全集 上巻』(至誠堂、国立国会図書館蔵 特63-605)所収「熊野」の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と段落単位で照合した独自編集本文です。底本の字句を残し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添えています。