謡曲「葵上」 / 第4場面
打擲と小聖への使い
この場面の挿絵を見る

あらすじ・人物・読み方
霊は制止を振り切って葵上の枕元を打つ。地謡は深い恨みと、生きてこの世にあれば光る君と契ったであろう無念を謡う。霊が破れ車に乗って隠れると、大臣は横川の小聖を招く使いを出す。
原文の一節を選ぶと、発音の読みと現代語を確認できます。読むだけでは音は出ません。どの読み方から始めても読了を記録できます。
表示設定
音声設定
原文・発音の読み・現代語
現代語で読む
生霊「いや、どのように言っても、今は打たずには済まないと、枕元に立ち寄って、ちょうと打つと、神子「これ以上はと(止めに)立ち寄って、私は後ろで苦しむ様子を見ている。」
生霊「今の恨みは、在世の時の報い。神子「瞋恚の炎は、生霊「身を焦がす。神子「思い知らないか。生霊「思い知れ。」
地謡「恨めしい心よ。ああ恨めしい心よ。人の恨みが深く、憂いの声でお泣かせ申し上げても、生きてこの世におられたなら、水闇き沢辺の蛍の影よりも光る君と契りを結んだであろうに。」
生霊「私は蓬生の(荒れ果てた宿のような身となり)、地謡「もと(頼るべき所)もない身となって、葉末の露と消えてしまったなら、それさえもことに恨めしい。夢にさえ帰らない私の契り。昔語りになってしまえば、なお思いは澄んだ鏡のようで、その面影も恥ずかしい。枕元に立てる破れ車に打ち乗って、隠れ行こうよ、行こうよ。」
大臣「誰かある。葵上の物の怪が、いよいよ並々ならず御座あるので、横川の小聖を招じて来てくれ。狂言「かしこまりました(底本は「シカシカ」と略記する)。」
底本:『謡曲二百番:四流対照』上巻 芳賀矢一訂、金港堂書籍、明治42年[1909]所収「葵上」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』上巻(金港堂書籍)所収「葵上」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。