第50帖 東屋 / 第11場面
形代の贈答
あらすじ・人物・読み方
薫は亡き大君の形代に寄せた歌を贈り、中の君は禊の川の撫物に託して返す。
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東屋・第11場面0 / 9
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見た人の形代ならば、身に添えて、恋しい折々の撫物にしよう。
と、例の、戯れに言いなして、紛らわしなさる。
禊の川の瀬々に出そうという撫物を、身に添う影と誰が頼めようか。
引く手数多く、とかや。気の毒でございますよ」と仰ると、「ついに、寄る瀬は、さらなりや。ひどく情けないような水の泡にも、争いますかな。掻き流される撫物は、さあ、本当だよ。どうして慰められることか」など言いつつ、暗くなるのも煩わしいので、かりそめに来た人も、不思議と思うだろうのも慎ましいのを、「今宵は、やはり、早くお帰りなさいね」と、こしらえやりなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第50冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。