ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

源氏物語 第50帖

東屋 あずまや

あらすじ

常陸守の後妻である母君に「姫君」と名づけて育てられた浮舟は、左近少将との婚儀の夜、少将が実の娘に心変わりしていたことを知る。宇治の中の君のもとを訪れた薫は、亡き大君の形代として彼女に歌を贈り、二条院と宇治のあいだで思いを深めていく。やがて浮舟は三条の小家へ移され、母と小萩の歌を交わす。薫は三条の小家を訪れて浮舟と一夜を語らい、翌朝、彼女を宇治へ連れてゆく。宇治では亡き人々を偲び、東屋の歌や月の歌が交わされる。

この帖の人物

肖像は物語をもとにした創作画です。人物の年齢・衣装は場面によって変わります。

三の宮

春宮の幼い皇子。紫の上に懐いて「婆」と慕い、二条院に遊びに来る。上の臨終が近づくころ、亡き後のことを言い残される。

呼び名:匂宮・匂兵部卿

浮舟

八の宮と中将の君の娘で、宇治の中の君の異母妹。京で母と継父の常陸介のもとに育つ。本帖では薫がその存在を知り、賀茂の祭の帰途、宇治で姿を垣間見る。

呼び名:

中将の君(浮舟の母)

八の宮に仕えた上臈で、宮の娘(浮舟)を産んだ。宮の没後は陸奥国の守に嫁ぎ、のち常陸介の妻となって京に住む。

呼び名:

常陸介

浮舟の母の再婚相手で、浮舟の継父。京で浮舟を育てる。

呼び名:

左近少将

年二十二、三の左近少将。気立てはしめやかで才は認められるが今風ではない。浮舟に熱心に言い寄りながら、彼女が守の実子でないと知って実の娘に心変わりし、婚儀の夜に西の対を空しく帰した。

呼び名:

仲人(東屋)

左近少将と常陸の家の間を取り持つ仲人。妹が西の御方に仕える縁で文を取り伝え、少将の翻意を守に説いて婚儀を取りまとめた。言葉多く追従のある人物。

呼び名:

浮舟の乳母

浮舟付きの乳母。婚儀の夜の騒ぎや家の中の噂の中で、姫君の身を案じる。

呼び名:

大輔(二条院)

二条院に移った宇治の中の君に仕える大輔。右近の母。朝の車の騒ぎなどで表に立って取り仕切る。

呼び名:大輔の君

宇治の中の君

八の宮と北の方の次女。おっとりとして愛らしく、箏の琴に優れる。姉の大君とともに宇治の山荘で育つ。第43帖の按察使大納言の娘・中の君とは別人。

呼び名:中の君

薫

女三の宮と柏木の間に生まれた若君。表向きは源氏の末子として六条院に迎えられ、五十日の祝いを受ける。生まれつき身に薫る香りを持つといい、その出生の秘密が後の物語の核となる。

呼び名:

右近(大輔の娘)

二条院の大輔の娘。中の君と三条の小家の浮舟の間を行き来し、車の騒ぎにも関わる。夕顔付きの右近とは別人。

呼び名:

弁の君

柏木の乳母の娘。母が権大納言(柏木)の乳母であった縁で、柏木の最期と言い残しを知る。八の宮の姫君たちの後見として宇治に仕え、柏木から託された遺文を守って、薫に出生の秘密を明かす。

呼び名:老い人

侍従(浮舟付き)

三条の小家で浮舟に仕える侍従。世の人の思い巡らすのに過ぎた女と評される。

呼び名:

場面 第1–5場面

第1場面筑波の姫君匂宮は常陸の姫君への思いを世間体に憚って秘めている。常陸守の後妻である母君は、実子でない浮舟を「姫君」と名づけて大事に育て、引き抜きん出た縁に就けようと明け暮れ思い扱っていた。第2場面求婚者たちと左近少将常陸の家には求婚者が絶えず、中でも左近少将が熱心に言い寄っていた。母君は少将を婿に選び、八月を婚儀の約束として、優れた調度を取り隠し、琴や琵琶を習わせて姫君を磨くが、守の田舎びた振る舞いには眉をひそめていた。第3場面少将の翻意婚儀を急く少将に、母君は仲人を呼んで遠慮の心を語る。ところが仲人の報告で、少将は姫君が守の実子でないと知って心変わりしていた。少将は世間体を理由に言い訳し、仲人は言葉多く弁明するが、少将の本意は守の実の娘にあることがほの見えてくる。第4場面仲人、守を説く仲人は守のもとへ行き、少将の真意をほのめかす噂を伝えて説得する。守は実の娘への縁談と受け取り、少将の家柄と帝の寵を並べ立てる仲人の言葉に喜び、財産の限りをもって仕えると請け合って承諾した。第5場面婚儀の夜仲人の取り持ちで婚儀が決まり、約束の夕暮れに少将が通い始める。北の方は浮舟の身の上を案じ、守は実の娘への縁談と受け取って騒ぎ立てる。

場面 第6–10場面

場面 第11–15場面

場面 第16–20場面

場面 第21–22場面

SOURCE & EDITORIAL NOTES

出典・底本

北村季吟『湖月抄』

書籍の絵は装飾イメージです。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第50冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。