ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

謡曲「羽衣」 / 第3場面

羽衣なき嘆き

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羽衣なき嘆きをもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

天人は、羽衣なくては天上へも帰れず、地に住めば下界の者となってしまうと嘆き、白龍とのロンギになる。涙の露に玉鬘も挿頭の花もしおれる天人の痛々しい姿に、白龍は心を動かされ、衣を返すと言う。

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謡曲「羽衣」・第3場面0 / 16
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天人「悲しいこと、羽衣がなくては飛ぶ道も絶え、天上に帰ることもかないません。ですから返してください。白龍「このお言葉を聞くにつけ、いよいよ白龍は力を得、もとよりこの身は心ない者、天の羽衣を取り隠し、返せないと言って立ち退くと。天人「今はさながら天人も、羽のない鳥のように、

白龍「天に上ろうとすれば衣なし、ロンギ「地にまた住めば下界である。天人「兎(と)であろうか、地謡「角であろうかと悲しんでも。

白龍「白龍が衣を返さなければ。天人「力及ばず。白龍「なすすべも(ない)。

地謡「涙の露の玉鬘、挿頭の花もしおしおと、天人の五衰も目の前に見えて痛ましいこと。天人「天の原を振り仰いで見れば、霞の立つ雲路に迷って、行く方も分からない。地謡「住み慣れた空にいつしか行く雲の、羨ましい景色であることよ。地謡「迦陵頻伽の慣れ慣れしい、慣れ慣れしい声も、今さらには恥ずかしいことよ。隔ての鐘の帰り行く天路を聞けば懐かしいこと、千鳥鴎の沖つ波、行くか帰るか春風の、空に吹くまで懐かしいことよ、懐かしいことよ。

白龍「いかがでしょう、お姿を拝見すれば、あまりにお痛わしいので、衣をお返し申し上げます。天人「まあ嬉しい。ではこちらへください。

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底本:『謡曲二百番:四流対照』下巻 芳賀矢一訂、金港堂書籍、明治42年[1909](国立国会図書館蔵 94-567)所収「羽衣」。本文画像:所蔵機関の公開資料。

明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』下巻(金港堂書籍、国立国会図書館蔵 94-567)所収「羽衣」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。