謡曲「羽衣」 / 第5場面
東遊の駿河舞
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あらすじ・人物・読み方
天人は月の世界の天少女の一人として、形見の東遊の駿河舞を舞う。春霞に月の桂の花が咲き、蕭笛・琴・箏・篌の音楽が満ち、落日の紅は蘇命路の山を映し、緑は波の浮島の嵐に花を降らす。
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地謡「一月(いちがつ)ごとに夜々の天少女、奉仕を定め役をなす。天人「私も数ある天少女の一人、月の鬘の身を分けて、仮に東の駿河舞、世に伝えた曲だということである。
ロンギ「春霞が、たなびいたことよ久方の、月の桂の花が咲く。実に花桂の色めくのは春のしるしであることよ。面白いこと、天でなくとも、ここも妙なり天津風、雲の通い路を吹き閉じよ。少女の姿、しばし留まって、この松原の、春の色を三保が崎、月清見潟・富士の雪、いずれが春の曙か。類ない波も松浦の風ものどかな浦のありさま、そのうえ天地は、何を隔てよう。玉垣の、内外の神の御末であって、月も曇らぬ日の本であることよ。
ロンギ「君が代は、天の羽衣まれに来て地謡「撫でても尽きない巌だということ、聞くも妙なり東歌、声添えて数々の、簫笛・琴・箏・篌が孤雲の外に満ち満ちて、落日の紅は蘇命路の山を映して、緑は波に浮島が、払う嵐に花降って、実に雪を巡らす白雲の袖こそ妙である。
天人「南無帰命月天子、本地は大勢至(菩薩)。地謡「東遊の舞の曲。天人「あるいは、天つ御空の緑の衣。地謡「または春立つ霞の衣。天人「色香も妙なり少女の裳(も)。地謡「一左右左、左右颯(さいうさつ)の衣。
底本:『謡曲二百番:四流対照』下巻 芳賀矢一訂、金港堂書籍、明治42年[1909](国立国会図書館蔵 94-567)所収「羽衣」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治42年(1909)芳賀矢一訂『謡曲二百番:四流対照』下巻(金港堂書籍、国立国会図書館蔵 94-567)所収「羽衣」(観世流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の主文(観世流)の字句を残し、他流の異文符は本文に含めていません。発音の読みと独自訳を添えています。