ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

和泉式部日記 / 第7場面

十一月――若宮と冬の歌

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十一月――若宮と冬の歌をもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

十一月、宮に若宮が生まれる。式部は複雑な思いを抱えながら、伊勢物語の歌を引き合う贈答や、雪に梅を見立てる歌を交わし、冬の夜を明かす。

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和泉式部日記・第7場面0 / 48
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君は君、私は私とも隔てなければ、心々にあろう物だろうか。こうして女は、風邪か、おどろおどろしくはないけれど、悩ましくするので、どうどうとお問わせになる。よろしく成ってある程に、どうぞと、お問わせになったので、少しよろしくなって候えば、しばらく生きて候おうと、お思いになったのに罪深く。そういうのは。絶えた頃、絶えないと思った玉の緒を、君によって又惜しまれることよ。とあると、いよいよ嬉しい事か、などとて。玉の緒は絶える物だろうか。契っておいた長い心に結び留めておいた。こう言う程に、年も残りないので、春の立つ方と思う十一月朔日頃、雪の打ち降る早朝に。神代より降り果てた雪だけれど、今日は殊に珍しいことよ。お返し。初雪といづれの冬も見たままに、珍しげない身のみ降り続く。などとこういうよしなし事に、明かし暮らす。お文があった。おぼつかなく成ったので、参ろうと思っていたのを、人々が踏み作るようだから、とおっしゃったので。いとまなみ、君がお聞きにならなければ私が行こう。踏み作るだろう道を知りたい。おかしく思し召して。我が宿に尋ねて来なさい、踏み作る道も教えよう、逢いも見られるように。又いつもより霜のとても白いのに、どう見るとおっしゃったので。冴える夜の数を書く鴨は私であることよ。幾つの朝霜を置いて見たことか。その頃雨などが激しいので。雪も降り雨も降ったこの頃を、朝霜とのみ起きていては見る。その夜おいでになって、いつもの物は(次ページへ続く)。かない御物語をさせなさって、もしかしかしこで差し上げて後、まらが、外にも行き、法師にもなりなどして、お目に掛からなければ、本意ない様にお思いにならないかと、心細くおっしゃるのに、又どうお思いになったのだろう。又そういう事の出て来そうかと思うと、とてもあわれで打ち泣かれてしまう。みぞれ立った雨の、のざいやかに降る程になり、少しうとうととあわれな事どもを、この世のみならずおっしゃった。思いがけない筋の交じり合いであるけれど、あわれに何事も、お聞きになり疎まないお心様なので、心の程もご覧になろうと思い立つ。大変こうしては本意の様にも成らないばかりぞかしと思う。とても悲しくて物も聞こえて、つくづくと嘆く気色を、ご覧になって。なおざりのあらましとに、夜もすがら。とおっしゃったので。落ちる涙は雨とこそ降れ。御気色の例より浮かびたる事どもをおっしゃって、明けるとおいでになった。何の頼もしげない事だけれど、つれづれも慰みに思い立ちつるのを、さらばどうしようなど、思い乱れて聞こえる。現にて思えば言う方もない。今宵のことを夢になしたい。とお思いになるけれど、どうしてかとて、端に(書く)。然ればこう契った物を、定めない、さは世の常と思いなせどや(思わせるな)。口惜しくもやとあるので、ご覧になって、これよりこそ、まずと思っていたけれど。現とは思うまい。寝ぬる夜の夢に見えた憂い事どもを。思いなそう。ああ心短(次ページへ続く)。短いことよ。程知らない命ばかりぞ定めない。契りとは、住の江の松。我が君よ。更にあらまし事に聞こえた。人遣りならぬ物侘びしとぞある。女はその後もあわれに思われて、嘆きばかりなさる。疾くとて、急ぎお立ちになったらと思う。昼つがたあるお文を見ると。ああ恋しい、今も見たいものだ。山賊の垣穂に生える大和撫子よ。とぞある。ああ物苦しいと言い腫れて。お返し。『伊勢物語』(の引歌)。恋しくば来ても見よかし。千早ぶる神の諫める道ではないのに。と申すと、打ち微笑ませなさってお思いにならない。この頃はお経をお習いになっているので。逢う道は神の諫めではないけれど、法の庭にいれば立たないのだ。お返し。私は進んで行こう。君はただ法の莛を広めるばかりだ。など聞くのに「えい」とさせながら過ごす。雪がひどく降る日、物の枝に降り掛かったのにつけて。雪が降れば、木々の木の葉も春でなく、をしなべて梅の花が咲いた。などおっしゃったのに、驚きながら。梅はもう咲いたかとて、折れば散る花とぞ雪の降るのは見えた。又の日、又努めて。冬の夜は恋しいことに目も合わず、衣を片敷き明かしをしてしまった。お返事、大変(次の和歌)。冬の夜は目さえ氷に閉ざされて、明かし難いのを明かしたことよ。など言う程に、いつものつれづれを慰めて暮らすのは、はかないことよ。どうお思いになるのだろう。心細い事どもをおっしゃ(次ページへ続く)。

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底本:『群書類従 第11輯』塙保己一編(経済雑誌社、明治27年[1894])。本文画像:所蔵機関の公開資料。

明治27年(1894)塙保己一編『群書類従 第11輯』(経済雑誌社)所収「和泉式部日記」の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の字句を残し、柱・振り仮名・小字の編者註は転写していません。発音の読みと独自訳を添えています。